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「ところでゆき、」
「なーに?」
「そろそろお父さん離れをしてみるっていうのはどうだろう?全寮制男子校の彗華学園を受験してみないかい?」
……え?
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ってやり取りが今からちょうど1年前の中学2年生の3月の話。
正直1年前のあのお父さんの発言にはびっくりした。あの寂しがり屋のお父さんがだよ!?
確かにこのままお父さんに甘えているのはいけないかなって思ってたけど…しかも全寮制男子校、全寮制っていくらなんでも酷いよお父さん。
お父さんいわく、僕のこの甘ったれな性格を心配していた所、ここの理事長さんと知り合いだったお父さんが、「息子さんがよかったらだけど外部生として入ってこないかい?」
と声をかけてもらったらしい。心を鬼にしたお父さんはその話を呑んで僕に提案したって感じ。
何度も何度もお父さんと話し合ったり周りのお友達に止められたりもしながら進路を決め、それから1年。勉強を頑張った結果、今、目の前に大きな門、その奥に大きな校舎、と、ホテル?みたいなのも見える。なんだか全体的にお城みたい。
これこそがお父さんが受験してみようと言っていた学校、私立彗華学園である。
ここかなりの山奥なんだけど来る途中の山道にもお城みたいな建物があったんだよねー。
間近で見るととんでもない迫力。
「でっかい…」
そう、めちゃくちゃでかかった。
校舎がきらきら輝いて見えるよ…やっぱりこれお城じゃない?
ちなみにお父さんは家から約3時間かかるここまで車で送ってくれた。
しかしそのまま仕事に行ってしまったので1人である。
多分だけど仕事は建前で僕と別れるのが寂しかったから早く行ってしまったのだと思う。涙目だったもん。
ちなみに僕は合格発表から毎晩泣いてた。お父さんの部屋に行っては「行きたくないよぉぉぉ」ってね。
今でもなんであの時この話におっけーしちゃったのかちょっぴり後悔することもあるんだ。ちゃんと話し合った結果自分で決めた進路なんだけどね。
でも今も涙目の自信あるよ。
「どうしよう…入寮手続きの為に人が来るって言ってたけど、」
この私立高校はエスカレーター式で初等部の1~6年生から中等部、高等部からなる12年生だ。
そんな中、外部生としてここの学校に入る僕は入学式なんてものはなく、みんなよりちょっと早めに入寮して4月の始業式に挑むのである。
お友達が一人もいないところから始まる、なんという地獄だろう。
僕の地元は人が少なかったから保育園から中学校まで大体面々は変わらなかったけどここは違う。自分から話しかけないとずっとひとりぼっち。耐えられるわけない。
あぁ、泣きそう寂しい
そんな時、
「あれ、もしかして君が外部生の子かな?」
とってもかっこいいお兄さんが来た。
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