うさぎとかめ episode2

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「うぉーい!亀公(かめこう)〜今度はどちらが早くあの岩山を登って頂上にたどり着けるか競走しよーぜ!」 「うさぎくん、こりないね、どうせ途中でまた眠っちゃうんじゃないの?」 「は?あれはー亀公があんまりにも遅すぎて、可哀想だからわざと寝てやったんじゃん」 負けず嫌いのウサギが言いました。 「今度は頂上についてから余裕で寝てやるよ」 「そんなに余裕があるなら、うさぎくん、僕よりも遅く、あとに出発してよ」 「あーいいよ?別に余裕で抜けるし どのくらいあとにする?」 「そうだなぁ、僕が、この山の半分くらいまできたら、うさぎくんが出発するのはどうかな?」 「余裕、余裕、ちょー余裕! どう見たって亀公の十倍は早いもんな」 「え?そんなに? だったら、僕が山の八合目まできてからでも余裕なんじゃないの?」 「おう!全然余裕余裕!それでもいいぜ!」 「じゃあ、僕が先に出発するよ?」 そう言って亀はよいしょ、よいしょ、と岩山を登ります。 しかし、足も短く飛び跳ねることもできないので、なかなか骨が折れそうです。 果たして、亀は無事、頂上まで辿り着くことができるのでしょうか。 「おーい!亀公よーそんなんじゃ日が暮れちまうぞー」 「うさぎくんこそ、眠りこけちゃわないように気をつけてよー」 「ははーこんなに遅いならちょっとくらい寝たって余裕だよ」 亀はひとつひとつ、短い足をかけながら慎重に登ります。 亀にとっては一生懸命でもウサギからみると、あまりにもゆっくりすぎて落ち着きません。 「おい!亀公よ!そんなに遅いと夜が明けちまうぜ!」 岩山の下でピョンピョンと跳ねながら、行ったり来たり、まだかまだかと待っています。 「ふう、、それにしてもどうしてうさぎくんは僕なんかと競走したがるんだろう?」 「うさぎくんはうさぎなんだから、他のうさぎと競走すればいいのに」 そんなことを思いながらも、ひとつひとつ岩山を登ります。 「あーー、なんかもう待つの飽きたなー、やっぱひと休みしようかなぁ」 なかなか出発できなくて退屈したウサギは、やっぱり、ひと眠りしてしまうのでした。 「ふう、よし、半分まで登れたぞ! うさぎくんは、、、おや?動いてないなぁ、さてはまた寝ちゃったのかな?」 ひといきつくと、またひとつひとつ岩山を登ります。 ウサギは、すやすやと寝息を立てています。 「よぉし、6合目までこれた!いい眺めだなぁ。。」 ゆっくりと登る亀はあたりの景色を堪能します。 「ぐぅーぐぅー」 すっかり眠り込んだウサギをよそに、亀はこつこつ登ります。 「おっとなかなか険しくなったぞ」 ここまで順調にきていましたが、ここにきて急に大きな岩にはばまれます。 「んーー、どうしよう、こんなに高いと、足が届かないよ」 亀はよじ登ろうと必死で足をのばしますが、つるつるとすべってひっくり返ってしまいました。 「うわぁー!どうしよう!ひっくりかえっちゃったよ」 「うーーん、うーーん」 亀は身体をもとに戻そうともがきますが、ゆらゆらと甲羅で揺れるだけで起き上がれません。 「どうしよう、本当に日が暮れちゃうなぁ、、、」 「うさぎくぅーん!うさぎくぅーん!」 ウサギに助けを求めますが、ウサギはすやすや夢の中、亀の声には気づいていません。 「うーーん、どうしようかなぁ」 亀が困っているとそこにイタチがやって来て言いました。 「やぁ!亀くん!なんの遊びだい?」 「やぁ!イタチくん!こんにちは! 遊んでるわけじゃないんだ、ちょっと困ってるんだ」 「なんだ!ひっくり返る遊びじゃーないのか」 「うん、今、僕はうさぎくんと競走中なんだけど、ここにきてひっくり返っちゃって、動けないんだ」 「え?うさぎっちと?あいつ、負けず嫌いだから弱いやつにしか勝負しかけないんだよなぁ」 「うん、それでね、イタチくんに助けてほしいんだ」 「いいよー、何を助けるんだい?」 「僕を元に戻してくれないかな?足が下になるように、ひっくり返してほしいんだ」 「いいよ!そーれっ!」 イタチが亀をひっくりかえすと、あっという間に元通り。 「わぁ!さすがだなぁイタチくん、助かったよ、ありがとう」 「で、なんの競走してるんだい?」 「この岩山の頂上にどちらが先に着くかを競走しているところなんだ」 「へぇえぇ、で、うさぎっちはどこにいるんだい?」 「うさぎくんは、僕がこの岩山の八合目まで登ってから出発だから、まだ下で待っているよ、きっと寝てると思うよ」 「八合目?もうすぐじゃないか、あいつ、まだ寝てていいの?」 「うん、ここに来てこの大きな岩がまだ登れないから、八合目までは時間がかかりそうだよ」 「あー!これね?俺が手伝ってやろうか?俺の上に乗って登れば上がれるんじゃないか?」 「え?いいの?イタチくんは競走してないのに」 「面白そうだし~うさぎっち、寝てるし、、、乗れよ、ほら」 イタチは亀を背中に乗せると上にあがれるように手伝います。 「わぁ!これなら登れそうだよ!イタチくん、本当にありがとう」 「いいよ、こんくらい!じゃーがんばれよーまたなー」 「うん!イタチくんありがとう!がんばるね」 イタチにお礼を言うと、またひとつひとつ岩山を登ります。 幸い登れなさそうな岩はあの一つだけだったようで、順調に上へ上へと登ります。 「ふう、そろそろ八合目かな?」 先程よりもまた、素晴らしい景色が目の前に広がっています。 「良かった!まだ日は暮れそうもないや」 一息つくと、亀は下にいるウサギに声をかけます。 「うおーーーーい!うさぎくぅーーーーーん! (うぉーいうさぎくーん)」 亀の声がこだまします。 「八合目まであがったよーー!! (八合目まであがったよ)」 「ふぁ〜よく寝たぁ!」 目を覚ましたウサギが伸びをして、上を見上げると、亀が手を振っています。 「お!亀公!もうあんなとこまで!」 ウサギは慌てて岩山を登り始めました。 軽快に岩山を登っていくウサギ。 ウサギが出発したのを見届けると、頂上めざして亀も登ります。 ウサギはあっという間に五合目まできます。 「楽勝じゃん!あともう半分で終わり?亀公、やっぱおっそ」 ウサギは、もう勝った気でいます。 「前は油断したけど、今回は楽勝だ」 六合目まで、あっという間に上ってしまいます 。 「うわ!もうあんなところまできてる!さすがうさぎくんだなぁ、いそがなきゃ!」 亀も負けじと頂上めざし登っていきます。 そして九号目にさしかかりました。 「お!亀公みーっけ!もうすぐ追いついちゃうじゃーん」 ぴょんぴょんっと登っていたその時です。 ウサギの目の前に大きな岩が立ちはだかります 。 「おおっと!こりゃちょっと高いなぁ」 ウサギは、一度立ち止まり、しっかりしゃがみこむと、後ろ足を思いっきり蹴りあげ、飛び乗ろうとします。 「うあ!」 しかし、あともう少しのところでギリギリ登れません。 「えええ!?亀公のヤツ、これをどうやって登ったんだ?」 何度も何度も飛びつきますが、あともう少し、足りません。 「よいしょ、よいしょ、よし、九号目をすぎたぞ!あとは頂上をめざすだけだ!もう少し、がんばるぞー」 亀は順調に頂上を目指します。 「くっ、なんだ!この岩!全然あがれねぇ!」 ウサギは助走をつけてみたりしましたが、やっぱり届きません。 「ちくしょー!!亀公のやつ、どっからあがったんだよぉ!」 ウサギは他に登る場所がないかウロウロさがしてみるのでした。 「ん?うさぎくんの姿が見えなくなっちゃった、また寝ちゃったのかな?もうすぐ、着いちゃうんだけどなぁ」 頂上の岩はもうすぐ目の前です。 「おい!どーなってんだ?やばいよやばいよ!また亀公に負けちまうじゃねーか!」 そこへまたあのイタチがやってきました。 「おう!うさぎっち!」 「あ、なんだよイタチー」 「亀くんと競走してるんだって?」 「なんで知ってんだよ」 「さっき亀くんに聞いたよ、相変わらず、自分より弱いやつにしか勝負挑まないよねー」 「うるせえなぁ!そんなことより、亀公がこの岩をどうやって登ったか知らないか?」 「え?さぁ?知らないなぁ、、まぁがんばれよー」 そう言ってにやにやしながら、イタチは去っていくのでした。 「やったー!!着いたー!!!」 とうとう亀が頂上にたどり着きます ウサギはまだ六合目でウロウロとしていました。 亀の声がこだまします。 「うおーい!うさぎくぅーーん! (うおーい!うさぎくぅーーん!)」 「僕の勝ちだよー(僕の勝ちだよー)」 「くっそーー!!!また負けたぁぁ!!」 あまりの悔しさに 地団駄を踏む、ウサギでありましたとさ。 おしまい。
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