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 今夜の亨流のテナーサックスは、随分と訥々としていた。楽器を初めて手にした高校生のような、素直で素朴な吹き方だ。少し、意外に思った。亨流は、内外で高いテクニックを評価されている奏者なのだ。 (でも……。本来の亨流さんは、こういう人なのかもしれないな……)  父、博昭の訃報に、駆けつけて来てくれた時のことを思い出す。
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