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 ベッドの中から天井に視線を巡らせ、ため息をつく。 (いつ来ても、芝居掛かった部屋だよな)  二人が身体を重ね合うのは、決まって碧の部屋だった。どこをどう見ても、二十五の若者の部屋らしくない、典雅な部屋。  寄木細工の床にウォールナットの腰壁、キャストガラスを嵌め込んだステンドグラスにアールヌーボー様式の家具。全て本物のアンティークだ。現代のものといえば、机上のスマホとペットボトル、無造作に脱ぎ捨てられた二人のリーバイスぐらいだろうか。碧の住まいは、お屋敷だとか館だとかの呼称が相応しい、年代物の洋館なのだった。
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