おしどり夫婦

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「莉々花、成美と会ったの? 今、職場違うだろ?」  柊斗は不思議そうに顔を上げた。現在看護師3年目に突入した莉々花は2年目になると同時に外来病棟へと異動になったのだ。  結局、覚えも要領も悪く病棟では看護師として使い物にならないと判断した看護師長。当時、成美も自分が教育担当を変わるからもう少し猶予をくれないかと説得したが、莉々花だけを優遇するわけにはいかないとあっさり飛ばされてしまった。  落ち込んでいた莉々花を励ますためにホームパーティーへ招待したのだが、それがこんな結末に繋がるとは成美も思っていなかった。  病棟と外来勤務とでシフトはバラバラになったが、それでもお互いに連絡を取り、シフトを共有しては時々会っていたのだ。 「入院患者さんが外来に受診することもあるんだよ。それで、この前成美さんが患者さん連れてきたの」 「ああ、そう」  ふーん、と興味のなさそうな柊斗に、ぷうっと頬を膨らめた莉々花。 「なんか柊くん冷たーい」 「莉々花と一緒にいるのに別の女の話なんかしなくてよくない?」  莉々花は、口の上手い柊斗の言葉に目を輝かせた。ニヤけてしまう口元を隠すように手を組んであてた。 「そうだよね、ごめんね」  莉々花の機嫌を取るのは柊斗にとって容易い。あまり感情が表にでない成美よりもよっぽど。  食事を終えると、柊斗は莉々花と近くのラブホテルに入った。1週間ぶりに莉々花を抱き、ベッドの上で仰向けになり天井を見上げた。 「柊くん、凄くよかった。……もう1回する?」  そう言って柊斗の胸に頬を擦り寄せる莉々花は幸せそうに目を瞑った。 「もう1回したいの?」 「うん。柊くんに愛されてるって感じたいの」 「いいよ」  ふっと頬を緩めた柊斗は莉々花の上から覆いかぶさった。莉々花の香水の匂いが宙に舞う。  抱かれるだけで愛されてるって実感できるんだから、やっぱり莉々花は単純で可愛いよな。男にとってセックスなんて単なる性欲処理でしかないのに。  そう思いながらも柊斗はその若く潤った体を再び貪った。  本能を剥き出しにする莉々花は、もっと触ってと強請る。恥ずかしがってされるがままの成美とするセックスは刺激が少なく面白味がなかった。  出会った当初、自分にだけ見せる恥じらう姿が可愛く見えることもあったが、それも5年続けば飽きる。自分の妻となったことで、自分にしかその姿をみせないのは当然になった。当たり前のことに特別感など抱きはしない。  今の柊斗にとって成美とのセックスは、性欲処理よりも義務に近い。対して、莉々花とのセックスは立派な性欲処理となり得た。
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