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『莉々花さんには他にもお付き合いしている男性が多くいるようでして、本命の相手というのができるのは都合が悪かったのでしょう』
『あぁ……なるほど』
瑞希は、多数の男性と関係をもっていることは知っているとでもいった口振りだった。成美は、そんなにも多くの男性と付き合っていながら柊斗とも関係をもっていたのかと怒りが込み上げる。
こっちは人生捧げるために結婚までしてんのよ。お遊びの延長線で他人の旦那に手を出すなんて……。
ギリッと奥歯を噛み締めた成美。莉々花が柊斗のことを本気で好きならまだ突発的に行動した理由もわかるが、単純に成美への当てつけのように感じた。
無心で証拠集めをしていたが、久しぶりに憎悪が込み上げる。あっさり肉体関係に進展した柊斗にもだ。
その他にも莉々花の交友関係が報告された。1時間程度で1つ目の音声は終わる。成美はボイスレコーダーを手に持ったまま、相手は探偵かしら……と考えた。
おそらく瑞希は莉々花について身辺調査を行っていたのだと察する。なぜ莉々花を警戒していたのかはわからない。しかし、瑞希が最後に言った「柊斗のことは裏切らない」という言葉。
あれは、柊斗のことは裏切らないけど莉々花の情報は渡すという意味だったのね……。ふーん……。調査結果を私に渡したってことは、きっと私と同じようにコピーは取っておいてあるはず。やっぱり侮れない人だわ。
うーん……私との会話もこれまでのものはとっておいてある可能性もあるわね。まぁ……いいけど。
不貞行為はないから私が不利になることはないし。
そう思いながら2件目の音声を聞く。
『今回の調査報告です。アリマホームの経営状況に関してですね。依頼件数も多いらしく売上も好調ですね。しかし、実際に家を建てた方々から話を伺ったところ、いくつか問題がありまして』
『問題?』
『はい。元々耐震を売りにしているアリマホームですが、その強度が本来の規定に満たない可能性があります』
『え? それって……欠陥なんじゃ……』
そこまで聞いて成美は慌てて音声を止めた。手で口元を覆い、顔を青くさせた。
ちょっと……待って。欠陥? 強度が足りないって……もし地震がきたら崩壊する恐れもあるってこと? そんな家がいくつもあるのよね……。それに、アリマホームって病院や施設も多く建築してるけど、もし少しの揺れで崩壊したら多くの人が危険に晒されるわ……。
詳しいことはわからないけれど、建築基準法なんかに引っかかったりしないのかしら……。
ゾクッと鳥肌が立つ。莉々花については腸が煮えくり返るほど憤慨していた。しかし、アリマホームについてはノーマークだった。
こんな大事な情報がどうして得られたのかと不思議でならない。しかし同時に残り3件も有力な情報が入っているように思えた。
成美は震える手で再生ボタンを押した。
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