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「おはようございます。とんでもない、及川さんこそ今日も素敵なお召し物ですね」
めんどくさいやり取りに顔を引きつらせたくなるが、さすがは毎日面倒な患者を相手にしている看護師である。まるで患者に接するかの如く、笑顔を作る。
「まぁ、ありがとう。先週主人に買ってもらったのよ」
おほほと言いながらまた自慢話である。これに捕まるととても長い。
「とても仲がよさそうで羨ましいですわ」
「あら、雨宮さんのところも円満じゃない! さっき旦那さんと会ったわよ! いつ見てもいい男ねぇ」
そう言いながら女の目をしたりするものだから、これには成美も堪らず苦笑した。
「ゴミ出しまでしてくれて、素敵な旦那さんね」
夫を褒められれば悪い気はしない。雨宮夫婦は、美男美女のおしどり夫婦として近所で有名なのである。
「ええ。ありがたいです、本当に。では、私これから買い物に行きますので」
「あら、引き止めちゃってごめんなさいね」
「いえいえ、それでは」
あっさり切り上げた成美は、スーパーの開店と同時に買い物を始めた。
目的のものだけを購入し、手際よく袋に詰めた。
家に帰ってから昼過ぎまで仮眠をする。それから乾いた洗濯物を取り込んでは畳み、柊斗のシャツにアイロンをかけた。
作り置きしても味の落ちにくいものを作り、粗熱を取ってから冷蔵庫へしまった。
換気扇を回し、窓を開けて換気をする。臭いよし、掃除よし、洗濯物よし。どこかしこも綺麗! 自分なりに納得した成美は身なりを整えて15時過ぎに夜勤へと向かった。
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