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プロローグ
「まい、かわいい」
「あおちゃ……」
昼下がりのわたしのアパート。久しぶりの逢瀬に酔いしれて、もう何時間も体を重ねていた。
かわいい、きれいって、甘く耳元で囁かれて、奥をつかれるとすぐ果てた。
でも、好きだとか、付き合おうとか、一度も言われたことがないし言ったこともない。
わたしたちの関係に名前をつけるとしたら、何になるのだろう。
幼なじみ? セフレ? それとも……恋人?
あなたを失うのがなにより怖くて、確かめることができない。
乳児期に棄てられたトラウマは、お互いの心の奥底でなりを潜めて、静かに蠢く。
何か失うのが怖い、だから何も持ちたくない。
「まい……」
何度もキスを落とされて、幸せだなと思う。でもこの先の未来はどうなっているのだろう。わたしたちは、どこへ向かっているのだろうか。
その不安が心を蝕む。あなたのとなりでずっと笑っていたい。願いはただそれだけ。
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