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その先のハッピーエンド
「よし、術式起動……***を呼べ!」
「行くぞ、それ!」
「あ、ちょっと待って、なんか匂いが違くない?それお神酒じゃなくてなんかビールみたいな匂いする……」
「んんん!?」
遠くでそんな声が聞こえた、気がした。
次の瞬間。
「誰……私を呼ぶのは……?」
ぐったりしていた重たい体を起こして、私は周囲の連中を睨んだのである。少々力を使って休んだ矢先にこれだ。なんて迷惑な連中なんだろうと思いながら。
怨霊、ナミコ。
ブラック企業に勤め、職場でいじめを受け、自殺したOL。それがそのまま時を経て怨霊となり、近づくものすべてを呪い殺す存在となった――それが私だ。
時々、愚かな人間の降霊術に引っかかって降臨し、そのたびにそいつらを皆殺しにして元の場所に戻っていくということを繰り返してきたのだが。
「……ほら、見なよみんな」
黒髪に金色の目の、綺麗な顔をした男性が呆れて私を見、傍に控えている皆を見て言った。
「明らかに違う人呼んじゃってるじゃないか。だからよそうって言ったのに、召喚陣使うの。アマテラスがひきこもって出てこないなんていつものことなのにさ、神様呼ぶつもりで人間呼んじゃってどうするんだよ」
そこは、こっくりさんとかをやる場所――にしては随分明るかった。しかも、屋外。明らかにどっかのお庭。
最凶の怨霊ナミコ。呼ばれた場所と呼んできた相手は、確実に呪い殺せない者達ばかりだった件。
何故なら自分をうっかり召喚してしまったのは、本物の神様の集団だったのだから。
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