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「つまり西側を探せば犯人のアジトが分かるって寸法さ」
「そもそも俺たちとウィズの犯人、もしくは犯人グループが同じって決まったわけじゃないだろ」
「いや、同じと考えていいと思う。イオ君は来たばかりで知らないと思うけど西側、特に南西側は王都の中だと治安はあまり良くないんだ」
話を聞くと、東側の居住区は貴族や金持ちが集まり、西側はそれ以外の住民が住んでいる。王都ともなると流石に隅々まで警備が及ぶわけじゃなくて、特に南西側は犯罪の温床になりやすいらしい。
「その中でも最近は窃盗集団が王都を騒がしていてね。手口は物を盗むだけ、人は傷つけない、そして西側へ逃げる、だ」
カームは確信めいて発言をしている。王都に到着してまだ数十分の俺より情報を持っているだろうし、どういう訳か知らないが調べはついているようだ。問題はなぜ全員に、懇切丁寧にこんなことを説明している、という一点だ。
「ならその情報を騎士団に伝えないとな。ロゼ、騎士団ってどこに行けば情報提供でいるんだ?」
「駐屯地に行けば、恐らく」
「じゃあウィズ、早速相談に行こうぜ」
「まぁ落ち着きなよイオ君」
「……なぜ肩を掴む」
「話が終わっていないから」
話を終わらせようと思ったから提案したが、安い策略に乗ってはくれない。上げかけた腰を力づくで戻された。この先の展開は読めているから、先に忠告しておこう。
「……言っておくが、あまり首を突っ込まない方がいい。ましてやお前、イースガラムの要人だろ。何かあれば国際問題だぞ」
「心配してくれるのは嬉しいけど、生憎そんなやわじゃないないよ。それに気になる噂もあるし」
「噂?」
聞き返すが笑顔を浮かべて見せるだけで誤魔化された。
「というわけで、みんなで窃盗団のアジトに潜入しよう」
カームがしれっととんでもない提案をすると、驚くわけでも聞き返すわけでもなく、三人は頭を抱えてため息を吐いた。なんとなくこれまでの苦労が伺える。
「……カーム、お前はまたそんなことを」
「何を言うんだい、ウィズ。君のためを思ってのことじゃないか」
わざとらしく熱い友情を演じている。
「お前のその好奇心のせいで俺たちがこれまで一体どれだけの苦労を……」
マリに目を向けると、何も聞くなと首を横に振った。
「何も僕は逮捕しようって言っているんじゃないんだ。ただ、ウィズの荷物を返してもらうだけだよ。ロゼさん、騎士として人助けは?」
「……と、当然」
「マリさん、困っている人がいるのに放っておいていいの?」
「うっ、いいってことはないけど……」
「ウィズ、荷物が返ってくれば嬉しいよね?」
「そりゃあそうだけどよ……」
「イオ君、僕たち友達だろう?」
「お前よくそれで俺が動くと思ったな」
俺のことなんだと思ってんだ。おちょくられている気がしてならない。三人は徐々にカームの提案に賛同する方に傾きつつあるようだが。
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