潜入の日

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「で、今回の作戦はイオ君にお願いしようと思うんだ」 「お前いい加減に……」 俺が言い終わるより先に畳みかける。 「帝国の留学生の実力、みんなも気になるでしょ?イオ君がどういう理由で留学を選んだのかは知らないけど、学校の中だけじゃ本当の実力は測れないと僕は思うんだ」 「言っておくが、俺は成績不振で単位習得のためにこっちに来ただけだ」 「それはイオ君が言っているだけだよね?」 「本人がそう言ってんだからそれ以上もそれ以下もないだろ」 「逆に、本人しかそう言っていないってことだよね?」 「……お前、本当に人の話聞かないな」 「人の話を聞いて客観的な意見を述べているなんだけどなぁ」 なお悪いわ。結局、人の話を半信半疑でしか聞いていないというわけだ。そういう風に育てられたのか、単にカームがひねくれているだけなのか。 「帝国騎士の実力、ロゼさんも気にならない?」 「くっ……」 話を振られたロゼは巻き込むのは申し訳ないと思いつつ本当は気になって仕方ない、という顔をしている。やっぱり口数の割には分かりやすい。しかしこのまま素直に巻き込まれるわけにはいかない。 「ウィズ、実力も何も分からない俺よりカームの方が信用できるだろ?」 「……いや、そうでもねぇんだ」 「……マリは?」 「カーム君は確かに優秀だけど、私も……ちょっと、あはは」 こいつら、今まで一体どんな仕打ちを……。 「ほら、僕に信頼なんてないだろう?」 「胸張って言ってんじゃねぇよ」 全く悪びれる様子もないカームにため息を吐いた。本当にこいつがイースガラムの王室育ちとは思えない。信用ならないというのは、信用できるようだ。 「あー……イオ、悪ぃんだが頼めねぇか?カームよりかはお前の方が信用できる」 頭を抱えるウィズに真剣に頼まれては断りづらい。というより、今までの仕打ちを想像すると、カームに任せるのは忍びない。 だが、安請け合いするわけにもいかないしな……。 「……西側って言っても王都は広いからなぁ」 「あぁ、そのことなら大丈夫」 カームが自信ありげにそういうと、知らない男がカームに耳打ちをして直ぐに立ち去って行った。 「この辺にいるってさ」 地図で南西の地点を指さした。 「おい、今の誰だよ」 「気にしない気にしない」 気にしない……わけにはいかないが、今のが王室の証拠ということで納得してやろう。 「それでどうするの、帝国の騎士様は?」 カームがそう言うと全員の視線が集まる。あまり期待されるのも、色々考えるも好きじゃないんだが、どうやら逃げ道はないようだ。諦めてため息をついた。 「……とりあえず様子を見に行こう」
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