潜入の日

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― 大通りと通り過ぎ、西側の地区に入った。レンガ造りの家が連なり、住宅街を形成している。中央から離れれば離れるほど、人の声や物音が遠くなり閑静になっていく。日の当たりの悪い場所も増え、建物の隅には苔が生えている場所まである。 人気のない道をしばらく進むと先頭を歩くカームが手で合図をした。それに合わせて全員が歩みを止めた。 「この先の建物みたいだよ」 カームは小声で話しつつ、一つの建物を指さした。 家、というより小屋と言った方が正しいかもしれない。一応窓は付いているが中の様子は薄暗くて伺えない。 「さて、ここからどうするんだい?」 こんな場所に来てもカームは楽し気に笑う。もう一々相手にしていたらキリがないのであえて無視することにした。 「とりあえず中の様子が知りたいな……。ウィズ、頼めるか?」 「構わねぇが、近づきすぎたらばれねぇか?」 「隣の建物の屋根に上ってくれ。そこからならここより見えやすいはずだ」 「分かった」 二つ返事で了承するとウィズは直ぐに華麗な身のこなしであっという間に屋根に上がった。 「ほう、ウィズを偵察に行かせるのは身軽さを見込んでのことかな?」 品定めするようにカームが見てくる。このまま観察されるのも居心地が悪い。 「お前にも仕事を与えてやる」 「何だろう、楽しみだな」 簡単に説明すると、カームは露骨に嫌そうな顔をした。 「それ、僕じゃないと駄目なのかい?」 「お前にしかできないんだ、カーム」 「そんな良い感じの雰囲気出されても言っても騙されないよ」 「いいから行け、邪魔だ」 「……本音が聞けて嬉しいよ」 カームは肩をすくめると、背を向けて歩き出した。姿が見えなくなったのを確認して、ため息をついた。
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