0人が本棚に入れています
本棚に追加
第14話 帰国したら三校戦
結局、槍試合は二回戦負けと言うオチが付いたもののアーサー王との出会いは竜也にとって良い目標ができた。
「ふ~、帰って来た次の日が登校日って運が悪いぜ」
教室でぼやく竜也。
「よ、英国王に負けた男♪」
日焼けした烈太が声をかけてくる。
「何だよそれ? 事実だけど」
「いや、お前の試合が世界中に中継されてたんだぞ?」
「あ~、その事すっかり忘れてた」
変身してたとはいえ、知名度を上げてしまっていた事に恥ずかしくなる竜也。
「そっちは、日焼けし過ぎじゃね?」
「ああ、ちょっと中東までな♪ 日本出ると竜騎士って有名なんだな」
他愛もない話題をする竜也、烈太が中東に行った理由はおそらくランプの精がらみだろうと思い聞かない事にした。
ジークリンデも花と語り合っていた。
「はい、頼まれてたお土産のチョコレート♪」
「ありがとう、ジークリンデちゃん♪」
「槍試合の会場で千円位で買えたから気にしないで♪」
「そうなんだ、ところで三校戦は知ってる?」
「えっと、この街のヒーロー科高校の合同運動会みたいな?」
「うん、そんな感じなんだけどね噂だと選手に」
花が言いかけた所で、先生が入ってくる。
「はい、皆さんお久しぶりです♪ 夏のイベント、三校戦の時期ですよ♪」
何故か先生のテンションが高かった。
「三校戦とは、我が椿原と王道館とサリエル魔法女学院の交流戦です!」
すごい勢いで黒板に書いて行く先生。
「先生も学生時代、サリ女には嫌がらせされて恨みつらみが」
先生からどす黒い負のオーラがにじみ出て来た。
「まあ、決められた競技で勝てば問題なしだから勝とうね♪」
にこやかに語る先生。
「うわ、面倒なイベントだな夏休み中なのに」
「絶対に出たくねえ、こんなイベント」
「私、出たくないんだけれど」
クラスの生徒達は、行事に後ろ向きだった。
「岸野君とファフナーさんは先生が推薦したので頑張ってね♪」
その言葉の後に、クラス中から万雷の拍手が巻き起こる。
「え? 俺達が出るんですか?」
「え~、こういうのってもっと凄い人が出るんじゃ?」
竜也とジークリンデも不満の意を漏らす。
「大丈夫、貴方達が幻想科の星よ!」
先生がガッツポーズを見せる、彼女の体からは炎のオーラが噴き出しておりお前ら絶対に勝って来いよという無言の圧が発せられていた。
「全力全開を尽くします」
「こうなったら、やってやるわ!」
かくして、竜也達は新たな催し物に強制エントリーされる事となった。
そんなこんなで登校日が終わり、帰れる生徒達は帰宅して行く中で竜也達は顔合わせとして他の科の代表と会議室で合流する事となった。
「失礼しま~す」
ガラっと引き戸を開けて、ホワイトボードと机と椅子しかない簡素な部屋に入る竜也とジークリンデ。
「あら~♪ あなた達が家の一年生代表ね♪」
「おう、いつぞやは世話になったな♪」
「やっほ~♪ 久しぶり♪」
「来たわね、問題児達」
竜也達の前に集まっていたのは、モヒカン頭の高速飛車。
美少年の夢田希に風紀委員の鉄鋼寺マルタ、そして見慣れない顔なのは
黒い姫カットの温和な女性。
「初めまして~♪ 幻想科二年の山津美琴よ宜しく♪」
「山津先輩、宜しくお願いします」
「たっちゃん、生徒会長だよこの先輩!」
「あらあら♪ 驚かれちゃった♪」
「そう言えば、入学式で挨拶していたな」
「お姉さん、ちょっと悲しい」
山津先輩、改め山津会長が悲しんだふりをする。
「会長、だれがどの競技に出るかの話し合いを」
マルタが話を進める、流石は風紀委員。
「そうね、三校戦は複数の競技で競い合うの」
会長がホワイトボードにペンで書いて行く。
「一つ目は、マシンレースだな」
高速先輩が笑顔で答える。
「高速先輩は、去年の競技で優勝してるの」
同学科のマルタが説明した。
「安心しろ、俺はもう刑は終わって放免されてるから出場できる」
やらかした高速先輩が慌てる。
「次は能力クレー射撃ね、光線や魔法で的を破壊するの」
会長が協議を軽く解説する。
「これは僕に任せて♪」
夢田がノリノリで立候補する。
「そうね、光線技は超人科の十八番だしね」
会長がホワイトボードに夢田の名を書く。
「私達は何に出れば良いんですか?」
ジークリンデが手を上げて質問する。
「あなたと岸野君は、巨大相撲とバトルジョストね♪」
「え? なんですかその競技は?」
竜也が聞きなれない競技に驚いて質問する。
「バトルジョストは、乗騎同士の対決もありのジョストよ♪」
会長がサムズアップで答える。
「英国でのあなた達の槍試合を見て、バトルジョスト向きだと学校が判断したの」
マルタが説明してくれる。
「結構、私達の試合て見られてたんだ」
「そうだね、次の槍試合は優勝しよう」
「うん、その為にもこのバトルジョストで勝とうねたっちゃん♪」
「うふふ♪ なら決定ね、巨大相撲は夢田君と一緒に頑張って」
会長が微笑みながら決めて行く。
「私と会長は、超人組手で頑張るわ」
最後にマルタが宣言をして、それぞれの出場競技が決まった。
一方、主催側の私立王道館でも生徒会室で会議が行われていた。
会長の机の後ろの壁には、王道の二文字の掛け軸が飾られている部屋。
そこには白いブレザーの学生服に身を包んだ四人の男女が集っていた。
「さて諸君、これより三校戦の会議を始める」
黒髪オールバックに眼鏡を掛けて長身で筋肉質なギリシャ彫刻のような美男子、生徒会長の牛田猛が口を開く。
「会長、出来れば俺は辞退したいんですが?」
眼鏡を掛けた温和な少年、学こと岸野学が手を上げて訴える。
「ちょっと、岸野君! 何て事を言うの!」
牛田の隣に座る、茶髪のツインテール美少女が叫ぶ。
「副会長、構わん♪ 岸野君の話を聞かせてもらおう」
牛田がツインテ少女、副会長の猫目ミサキ《ねこめ・みさき》を黙らせる。
「椿原の代表に従兄弟が入ってまして、紛らわしいかと」
学が理由を答える。
「ふむ、それだけではなかろう? 出る競技を被らせなければ良い♪」
会長が笑顔で学の辞退を却下する。
「そうよ、競技は男女も別だし問題なし♪」
ミサキが笑って牛田に同意する。
「君にも色々あるだろうが、俺は君の腕を買っている心配するな♪」
牛田は学に優しく微笑む、圧が強い笑みで。
「まあ、岸野は諦めなよ? 生徒会は三校戦出場は必須なんだ」
ノートPCで会計ソフトに入力作業をしている眼鏡を掛けた黒髪ロングの美少女が学を諭す。
「会計の千鶴君の言う通りだ、我ら王道館ヒーロー生徒会は逃げられん」
牛田が最後通告のように告げる。
「そういう堅苦しいのは嫌いなんですけど俺?」
学が溜息をつきながらぼやく。
「俺も他の役員も嫌いだが、学校行事は真面目にこなさねばなるまい」
牛田が学をなだめる。
「だから、さっさと決めて帰りに皆でお好み焼きでも食べに行くわよ」
ミサキが進行を再開する。
「明太餅もんじゃも良いぞ♪」
「会長、予算内でお願いしますね」
何だかんだで仲は良い、王道館の生徒会であった。
そして最後は、サリエル魔法女学院。
そこは、山奥にそびえる五つの塔を壁で繋いだ巨大な白亜の城だった。
中央の塔にある生徒会室では、代表選手である少女達が集まっていた。
床に敷かれた魔法陣の角に合わせて配置された椅子に座る少女達。
「それでは、三校戦のお話をしましょう♪」
水色のリボンタイ付き白ブラウスの上に黒ローブ、赤いチェックのスカートと制服
を着た緩いウェーブのかかった金髪のおっとりした糸目の生徒が話を切り出す。
「エリザベス会長、それは良いけど何でメイが選ばれたの?」
赤毛の活発そうな少女、ジョーが疑問を口にする。
「わ、私だってサリ女の一員ですよジョー先輩!」
安藤メイが叫ぶ。
「あんたは生徒会役員じゃないでしょ?」
ジョーが溜息をついて答える。
「メイは、頭数じゃない♪」
緑髪の少女、ヴァネッサが明るく笑う。
「む! ヴァネッサ、斬りますよ!」
「へへ~んだ♪ メイなんかに負けないよ♪」
ヴァネッサは余裕な態度を崩さない。
「まあまあ、私達で争っても意味がないよヴァネッサ♪」
銀髪の少女、フィーナが止めに入る。
「そうね、メイが選ばれたのは先生の占いだし良いんじゃない?」
エリザベスがポンと拍手をすると、少女達全員に紅茶入りのカップが現れる。
「はわっ!」
メイだけが慌てて、虚空から出て来たカップをキャッチする。
「まったく、そんなんで大丈夫なのかね?」
ジョーが指を鳴らすと魔法陣の上にテーブルが現れる。
「や~い、メイのドジっ子~♪」
ヴァネッサが口笛を吹けば、テーブルの上には色とりどりのケーキが並ぶ。
「うう、ならば大会では頑張って活躍して見せますよ!」
メイが唸りながら魔法で、フォークとナイフを出してテーブルに並べる。
「じゃあ、お茶会をしながら決めましょう♪」
フィーナの言葉に全員がフォークを取りケーキを取った。
「僕が巨大相撲に出るのだ♪ 召喚魔法を見せてやる♪」
ヴァネッサが苺タルトを食べながら語る。
「王道館は牛田さんよね、怪我させちゃ駄目よ?」
エリザベスがヴァネッサに注意する。
「会長、あの筋肉ダルマが好きなのかい?」
ジョーがげんなりした顔で尋ねる。
「ジョー? 彼は素敵な紳士よ、私の愛しい方ですからね?」
チーズケーキを切り取りながらジョーにも注意するエリザベス。
「確かに、明るく優しい人でしたからね牛田会長は」
フィーナがエリザベスに同意する。
「そうなの♪ 椿原の山津さんが彼に気安いけれど、それは彼の人徳だから♪」
エリザベスがチーズケーキをナイフで千切りにしながらつぶやく。
「か、会長が怖いです!」
メイがエリザベスを見て怖がる。
「メイ、恋をすると人は変わるからね学園最強の魔女でさえも」
ジョーがメイに語り掛ける。
「会長、立派なヤンデレですよ? ですが、決めるなら早くしましょう♪」
「フィーナったら、ひどい! でも、恋は戦争だから決着は付けないと」
「会長~? 恋よりも、今は三校戦の戦略なのだ~?」
ヴァネッサのツッコミは、恋する乙女モードのエリザベスに届いていなかった。
「私、とんでもない人達と一緒に出る事になってしまった!」
メイは自分達のリーダーがヤンデレ化したのを見て旋律を覚えた。
かくして、それぞれの学校で色々な思いが蠢きつつ三校戦へと向かって行く。
最初のコメントを投稿しよう!