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第18話 大一番、巨大相撲!
「そういや、何で夢田君じゃなくて岸野君達なんです?」
次の競技の巨大相撲を前に控室でマルタが山津会長に尋ねた。
「夢田君は、燃費が課題なのよ」
「僕の力、変身の維持だけでもエネルギー使うんだ」
希曰く、変身しただけなら変身から一日は持つとのこと。
「そこからあれこれ格闘やら、光線撃って行くと減って行ってダウンか」
飛車が聞いた話から推測を語る。
「あ、エネルギー吸収での回復と消費が追いついていないのか!」
「つまり、強敵相手だと根負けするのね」
自分達が巨大相撲に出る理由を理解した竜也達。
「最初は、他の巨大戦できる子も募集したけれど夏休みを潰したくないって」
山津会長が悲しみの溜息をもらす。
「まあ、仕方ないっすね」
自分も出る気がなかった竜也が呟く。
「あ、そうそう♪ 巨大相撲は武器禁止だから気を付けてね♪」
山津会長が思い出したように言う。
「でも、光線とかはありなんですよね? まあがんばります」
「私達なら勝てるよたっちゃん♪」
竜也とジークリンデは試合の場所へと向かった。
王道館の控室では、持ち込まれたコンロの上でぐつぐつと大きな鍋が煮えていた。
「会長、特盛ちゃんこ鍋ができました!」
学が鍋の蓋を開けて火を止める。
「会長、ご飯山盛りです♪」
ミサキが寺で見るような大きい鉢サイズの丼に、ご飯を山盛りで盛り付ける。
「デザートの砂糖水もできてます!」
千鶴が砂糖水で満たされた木の桶を持って入って来た。
「諸君、ありがとう♪ いただきます!」
牛田は胸の前で合掌し、常人ならカロリー摂り過ぎな食事をまさに牛飲馬食の勢いで取り始めた。
牛田猛は超人である。
人間時でも闘牛の如き体躯と膂力を持つ彼が、巨大ヒーローのハクギュウジンとして全力で戦うには膨大なカロリーが必要だった。
「美味い♪ 美味い♪ 美味いぞ皆~っ!」
仲間達が彼の為に用意してくれた食事を感謝して味わいつつ平らげて行く。
食事のカロリーだけでなく、込められた思いも彼の力に変わるのだ。
山盛りのご飯、特盛のちゃんこ鍋、デザートの砂糖水と全て食べ切った彼の
手首に虚空から出現した金で出来た変身ブレスレットが嵌る。
「ごちそうさまでした! では諸君、行って来る!」
合掌して食事を終えると、彼は立ち上がり試合の場へと向かって行った。
「まさか、椿原がダークホースになるなんてね」
サリ女の控室、ジョーが溜息をつく。
「そうね、残るは巨大相撲と超人組手ね」
エリザベスがこうお茶を飲みながら呟く。
「まだ諦めてないのだ!」
ヴァネッサが叫ぶ。
「そうです、まだ終わってませんよ!」
メイもまだ諦めていなかった。
「私も巨大相撲にはエントリーされてますから!」
メイが出場を宣言する。
「本当だ、メイちゃんも登録されてました!」
フィーナが巨大相撲の取り組み表を見て驚く。
「エリザベス、知ってたの?」
ジョーがジト目でエリザベスを見る。
「ええ♪ 二人出せば勝率は上がるから♪」
エリザベスが狡がしこい笑みを浮かべる。
サリ女は、ヴァネッサとメイが勝利を目指して試合へと向かった。
巨大相撲の会場は、山の中の開けた場所に広大な土俵が設置されていた。
王道館の理事長の権八がマイクを握る。
「これより、巨大相撲を執り行う!」
マイクの意味がないほどの大声で会った。
一番目の取り組みは、ヴァネッサ対牛田。
手首の変身ブレスレット以外は廻のみの牛田。
「ほう、サリ女のお嬢さんはその熊で来るのか?」
「そうなのだ、私の全力の魔法で挑むのだ!」
紫色の熊のぬいぐるみを持ち、ローブにとんがり帽子と魔女っ子姿のヴァネッサ。
「それでは両者みあって、はっけよい!」
権八の合図とともにヴァネッサは熊のぬいぐるみを巨大化させて乗り込む。
牛田は金の角が生えた白い巨人、ハクギュウジンへと変身した。
どちらも五十メートル、まさに巨大相撲だ。
ぶちかましを行うハクギュウジン、巨大ぬいぐるみも同じく突撃。
「俺のぶちかましに耐えるとはやるな♪」
「負けないのだ!」
激突し組み合う二体、相手を讃えるハクギュウジンに対して巨大熊ぐるみはその首筋に噛み付いて来た。
金色の瞳が一瞬点滅し苦悶するハクギュウジンだが、彼も負けじと角から電撃を放ってやり返す。
「んぎゃ~~!」
ハクギュウジンの電撃は神由来の力、魔法の力で巨大化した熊ぐるみは抵抗できず嚙みつきを解くも腕を振り上げ叩きつけに行く。
「前に進む意気や良し! だが、脇が甘い!」
巨体を素早く移動させ、熊ぐるみの腕が振り下ろされると同時に掴んで極める!
「ぬいぐるみだから、やわらかいのだ!」
取れた腕を柔軟化させて抜け出し、逆の手で張り手をかます熊ぐるみ。
その一撃を肩をすくめて首を亀のように縮めて耐えたハクギュウジン。
「良い打ち込みだ、だがこれで決める!」
相手の脇を抱き締めロックし、捻り倒した。
豪快に倒された熊ぐるみだがその衝撃などは土俵の外には出なかった。
「勝者、王道館! 決まり手は合掌捻りである!」
権八が判定を述べると、王道館側は大喜びした。
勝負が終わり互いに元に戻った二人、牛田は倒れたヴァネッサをお姫さま抱っこで
抱え上げた。
「な、何するのだ!」
「何、君達の所まで運ぶだけだ♪」
「子ども扱いするな!」
お姫様抱っこされ、改めて牛田がイケメンっである事に気付き照れるヴァネッサ。
サリ女の観戦席まできた牛田がエリザベスへヴァネッサを差し出す。
「貴方に抱きかかえられたヴァネッサが、羨ましいですわ♪」
「こんな大飯ぐらいの男で良ければ、いずれ」
「ええ、魔女との約束は絶対ですからね♪」
ヴァネッサを引き渡して去って行く牛田を見るサリ女チーム。
「……あ~? エリザベスが惚れるのもわかったかも」
ジョーが頬を赤く染める。
さらりと対戦相手の心をつかむ牛田であった。
続いての取り組みは、メイと竜也&ジークリンデ。
「ジョストの仇はここで取ります!」
「上等♪ たっちゃん、行こう♪」
「それでは、はっけよい!」
合図とともに、巨大な鎧武者のダイセイバーメイと巨大な竜騎士ジークフリーデンが相まみえる。
こちらも五十メートル級同士の対決となった。
「私が行く、ジークドラッヘン!」
ジークフリーデンの内部でジークリンデが叫ぶと同時に、ジークフリーデンの姿が
人型からドラゴン型へと変形して突進した!
「な! 変形するなんて聞いてないですよ!」
ジークドラッヘンの突進を受け止めるも、押されるダイセイバーメイ。
「相撲なら、家で見てたんだから! 電車道っ!」
攻めの姿勢で進むジークドラッヘン、だがダイセイバーメイも負けてはいない。
「女子のちびっこ相撲の横綱を舐めないで下さい!」
ジークフリーデンを振りほどくダイセイバーメイ、ジークドラッヘンはよろめくも尻尾で地面を叩いてバランスを取り直して踏ん張る。
「ああ! 尻尾なんてズルいですよ!」
「ギリギリ反則じゃない!」
バチバチに取っ組み合う二体、ダイセイバーメイも衝撃波が出るほどの猫だましを繰り出し両者譲らない。
「ええい! もうこれで決めてみせます!」
ダイセイバーメイがジークドラッヘンに覆いかぶさろうとする中一方、ジークドラッヘンは姿勢を低くしてから相手に合わせて上体を起こして反り投げを決めた。
「勝者、椿原! 決まり手は反り投げである!」
権八の勝利の判定に椿原チームはガッツポーズを取って喜んだ。
勝負を終えて土俵を降りたメイ達。
「負けてしまいました、残念過ぎます!」
「来年は勝とうね、メイちゃん♪」
メイを慰めるフィーナ、これによりサリ女の三位は確定となった。
「やはり椿原の彼か、ますます欲しい人材だ♪」
竜也達の取り組みを見ていた王道館、牛田は酒樽に入った砂糖水を飲み干し呟く。
それぞれのチームの仲間達が見守る中、最後の取り組みが始まる。
「さっきはリンちゃんに任せたから、今回は俺がメインで」
「うん、たっちゃんなら行けるよ♪」
合図が始まり、ジークフリーデンとハクギュウジンが向かい合いぶつかり合った。
互いに頭をぶつけ合い、金色の電撃と暗黒の電撃を流し合い爆発が起こる。
「良い度胸だ♪ かかって来なさい♪」
「胸を貸す気でいるなら、ぶち抜いてみせる!」
掌に暗黒のブレスを球状に発現させ、張り手と共にブレスを突き出す!
ジークフリーデンのブレス張り手を避けたハクギュウジン、お返しとばかりに距離を詰めて金色の電撃を纏った張り手で喉輪をジークフリーデンに仕掛ける。
「あばばばばば!」
強烈な刺激が襲ってくるも、爪を生やしてハクギュウジンの脇腹をガッシリ掴む。
「ぐはっ! やるじゃないか♪」
喉輪をしていた手を離すハクギュウジン。
「土俵に上がったからには、負けてたまるか!」
電撃から立ち直り、額に暗黒のエネルギーを集めて相手に頭突きをかますジークフリーデン。
「がはっ! 負けたくないのは俺もだよ♪」
やられたらやり返すとばかりに、ハクギュウジンも電撃頭突きを返してくる。
土俵の上でのぶつかり合い、相撲と言うよりはプロレスの如く手四つとなった。
押し合い、引き合いから互いに相手の腰を掴み合う。
「こいつで止めだ!」
動いたのはジークフリーデン、尻から暗黒のブレスを放出してブーストし踏ん張るハクギュウジン諸共土俵の外へと押し出て飛び出した!
「勝者、椿原! 決まり手は押し出し!」
土俵の外から出た途端、元に戻った竜也達。
「たっちゃん、駄目!」
牛田を押し倒しかけた竜也を翼を生やしたジークリンデが空へと持ち運ぶ。
「え? ちょっと、どういう事?」
「たっちゃん? 私以外を押し倒しちゃ駄目なんだからね!」
ジークリンデは例え相撲でも竜也が自分以外の相手と絡むのが嫌だった。
「いや、ちょっと! 変な想像してない? 下ろしてくれよ!」
「駄目っ! 試合も終わったんだからこのままお家帰るのっ!」
竜也は変なやきもちを焼いたジークリンデにより、彼女と共に強制的に帰宅させられた。
それを見上げるのは各学校の面々。
「全く、岸野の孫共は女の尻に敷かれっぱなしであるな♪」
実はマルタの祖父や竜也と学の祖父と友人の権八が、空を見上げて大笑いする。
「あらあら、あの子達は仕方ないわね~♪」
山津会長も笑って見送る。
残る椿原の仲間達も、他校の生徒達も去って行く竜也達を見上げて大笑いするしかなかった。
この競技にて、椿原の総合一位は確定となった。
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