第19話  超人組手と決着

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第19話  超人組手と決着

 次の日、最後の競技超人組手が始まろうとしていた。  「最後は大きい道場でやるのか」  「格闘ゲームみたいだね♪」  竜也とジークリンデは観戦に回っていた。  男女が道場内のスペースを半々にわけて試合を行う。  「ハイウエイダー、参上っ!」  「岸野流正統、白陽っ!」  男子はハイウェイダーと白陽の勝負だ。  両者、互いに構えて合図と同時に動く。  「ウェイダースライディング!」  脳内でコースを想像し超高速で足踏みをしたハイウェイダーのスライディング。  白陽は側転で避けるがハイウェイダーの方が早い。  「スピードが生むパワーを受けろ、ウェイダーッシュ!」  素早く立ち上がり体当たりで突っこんで来る。  「岩融っ!」  白陽のカウンターの肩当身とハイウェイダーがぶつかると、爆音と共に衝撃波が発生しハイウェイダーが弾き飛ばされた。  「スピード注意だ!」  白陽の技が決まった、だがそれで勝負は終わらない。  「俺は回復の速度も速いんだよ♪」  ハイウェイダーが、吹き飛ばされた状態から物理法則を無視して空中で宙返りからの着地を決める。  「ウェイダーマシンガン!」  超高速でジャブを連打し、無数の衝撃波を飛ばして白陽を殴るハイウェイダー。  「衝撃波なら、虎号(こごう)っ!」  白陽の虎の頭を模した胴鎧が口を開けて吠え、衝撃波を衝撃波で打ち消した。  だが、打ち消した後にはすでにハイウェイダーは消えていた。  「雷足(らいそく)っ!」  野性の勘からの白陽の電光石火の高速移動がハイウェイダーの速度を上回る。  「な、瞬間移動っ!」  「否、そっちと同じ高速移動だ!」  白陽も超高速で動けると知らなかったハイウェイダーは背後を取る事に失敗し 白陽と真正面からの殴り合いに持ち込まれた。  互いに超高速の世界で、突きや蹴りを受け交わしと技の応酬を繰り広げる。  「こいつで決めるぜ、ウェイダーパンチ!」  「岸野流、鐘撞っ!」  ハイウェイダーの顔面狙いのストレートに対して、白陽は相手の拳を狙い突きで返す。  互いの拳がぶつかり合い、その衝撃で双方の変身が解けて共倒れとなった。  男子の部は王道館と椿原、双方無得点と言う結果になった。  「学とあそこまでやり合うって、高速先輩すげえな」  「うん、私も驚いた」  竜也とジークリンデは、驚愕しつつハイウェイダーを見直したのであった。  男子部門は椿原にとって残念な結果になったが、女子部門は燃えていた。  「分身水遁連弾(ぶんしんすいとんれんだん)っ!」  王道館のバードクレーンが空中で無数の分身を作りバレーボールほどの水の塊を射出する。  「甘いですわ♪ 雨よ、シャーベットにな~れ♪」  ローブにとんがり帽子姿のエリザベスが明るく笑顔で呪文を唱えれば、彼女を襲う水の塊が全て瞬時に凍り付いて砕け散る。  「ならば、クレーンキックでっ!」  バードクレーンは空中から蹴りを放って落ちてくる。  「その判断は甘くってよ♪」  エリザベスも魔法で飛翔しバードクレーンの両足を掴んでひっくり返す。  「マジカルロックからの~♪ マジカルドライバーですわ~♪」  エリザベスが魔法でバンプアップし、バードクレーンの膝関節をガッチリ極めてからの空中パイルドライバーを仕掛けた!  だが、地上に降りたエリザベスが抱きかかえていたのは降参の二文字の張り紙がされた丸太であった。  「あら残念♪ 次はリングで戦いたいですわ♪」  エリザベスの勝利であった。    「学君が勝ったのは嬉しいけど、学校が巻けたのは悔しい」  緑色のマッシヴな装甲を纏いサンマルタとして、セイバーメイと対峙するマルタ。  「何ですか! 女子高の私の前で彼氏自慢ですか!」  「優しさと賢さと強さと愛らしさを持つ彼氏がいてごめんなさい」  早口で惚気るサンマルタにセイバーメイがキレる。  「問答無用! リア充は成敗です!」  「私は負けない! 鎧抜正拳(よろいぬきせいけん)」  マルタが放つのは、鉄鋼寺流の鎧の上からでも相手を打ち抜くと言う正拳突き。  メイが放った突きとマルタの突きで、拳同士がぶつかり合う!  拳を素早く引き、惜し蹴りでメイを吹き飛ばすマルタ。  「マジカル旋風投げ!」  だが、魔法で両腕を伸ばしたメイがマルタの足を掴み投げ飛ばす。  「まだ! マイクロブースターオン!」  マルタも背中のブースターを発動し、空中で体勢を立て直し着地する。  その瞬間を狙い、セイバーメイが低空タックルで突っこんで来る。  「てりゃ!」  マルタ、足を縮めて寝っ転がると突っこんで来たメイにタイミングを合わせて 足を延ばして蹴りでの巴投げもどきを掛けた。  「これは岸野流の猿投(さるなげ)、覚えておいて良かった♪」  マルタが起き上がるがメイの方は目を回して気絶していた。    「や~ま~つ~さ~ん♪」  エリザベスが獰猛な笑みを浮かべる。  「あらあら、こわいこわい♪」  巫女装束を纏った山津会長とエリザベスの対戦が始まろうとしていた。  「先手必勝、マグマラッシュ!」  山津会長が両腕を燃え盛るマグマに変え、距離を取って両手から繰り出すジャブで溶岩を飛ばす。  「ならばこちらも、アイガースプラッシュ!」  山津会長が火山なら、エリザベスは雪山でと氷の塊を飛ばし相殺する。  飛ばし合いの後は組み合い、エリザベスも氷の腕で山津会長の溶岩の腕と 手四つで組む。  「山津さん! 相変わらずやりますわね♪」  「まさか今年もあなたと対戦するなんて思わなかったわ♪」  力比べからの捻り合い、そして溶岩の熱気と氷河の冷気を額に集めての頭突き合い が始まる。  これは、巫女対魔女っ娘のプロレスだ。  「今年はもう私達の優勝は決まっているのに頑張るのね♪」  「お~っほっほっほ♪ 私、ラスト五秒の逆転レスラーでしてよっ!」  「屁のツッパリみたいな意地は私も大好きよ♪」  両者互いにバンプアップしてから、双方の魔力による特殊空間の形成をする。  そこは王道館側が用意した試合場ではなく、白いマットのジャングルだった!  距離を取った二人、山津会長はリング外に火山を召喚し火口にダイブ。  「フェニックスダーーーイブッ!」  火口から噴火と共に飛び出し、空中で炎を纏い大の字になった姿はまさにフェニックス。  「北極ブロックですわ!」  エリザベス、寝転がり北極の如く分厚い氷壁を展開し山津会長のフェニックスダイブを受け止めた。  「そこからの吊り天井固めも知ってるわ♪」  だが、山津会長の予想は外れる。  エリザベスはダイブを止めてから避けて山津会長をマットに這わせる。  「今年は新技、アイスコフィンクラッチを召し上がれ♪」  エリザベスは大の字でマットに這った山津会長の背に跨り、氷の腕で彼女の首をロックしてキャメルクラッチで反り上げた。  反り上げた状態でエリザベスは、山津会長を凍らせると特殊空間を解除する。  「時間通り、ラスト五秒で決着ですわ♪」  審判がエリザベスの勝利を判定したと同時に、山津会長は元に戻りダウンした。  「うちの会長、流石だねえ」  「流石はサリ女の、ラスト五秒の女なのだ」  「会長、流石です♪」  サリ女チームの観戦組が語る。  「鉄鋼寺さん、ごめんなさいね後はお願い」  試合後の山津会長がマルタに頼む。  「わかりました、私の空手と岸野流のスイッチ戦法を見せて来ます」  女子部門の最後の試合が始まる。  最後の試合はサンマルタ対エリザベス。  ここでエリザベスが勝てば、サリ女は総合二位に追い上げられる。  「順位は勝っていても、勝負であなたに勝ちたい!」  「その意気や良しですわ♪」  足元を魔法で凍らせての低空タックルを仕掛けたエリザベス。  「魔法プログラム発動、フレイムヒール!」  サンマルタはスーツに内蔵されたAIに炎の魔法を発動させて跳躍し、燃え盛る踵落としの鉄槌を氷の魔女へと振り下ろす!  「私、背中にアイガー氷壁背負ってますの♪」  エリザベスが無詠唱で背中に張った氷壁で防がれる。  前転してからエリザベスへ向き直るサンマルタ。  「私、打撃はボクシングしか嗜んでおりませんがお付き合いいたしますわ♪」  エリザベスが両の拳を氷で包めば、サンマルタも手足を赤熱化させる。  サンマルタの猛攻をエリザベスは払い、受け流しと耐え凌ぎつつお返しにと殴り 返してくる。  サンマルタ、スーツのエネルギーが減って来たので距離を取り息吹で気息を整えると共に充電を試みる。  「え、回復よりも消耗の方が多い?」  マスクの中のディスプレイで数値の変動を見たサンマルタが焦る。  「余所見は厳禁でしてよ♪」  エリザベスがサンマルタの隙を突いて近づき、背後を取って腰をクラッチ。  更にクラッチ部分を魔法で凍らせて相手の身動きを封じこめる.  「行きますわよアイシクルジャーマン♪」  エリザベスの氷魔法とジャーマンスープレックスの合わせ技が炸裂した。  サンマルタのスーツは装着者の生命維持に残るエネルギーを投入し、技の衝撃を無効化して消滅した。  「会長、申し訳ありません」  山津会長に謝りながらマルタはダウンした、エリザベスの勝利により超人組手は サリ女の大逆転で幕を閉じた。    「それでは表彰式を開始する、代表者は前へ!」  王道館の校庭で行われた表彰式、椿原権八の前に山津会長が進み出る。  「椿原市立ヒーロー高校、優勝おめでとう!」  「ありがとうございます」  山津会長が優勝旗とトロフィーを受け取ると、参加者全員が拍手を行った。  「準優勝はサリエル魔法女学院、超人組手の追い上げは見事であった」  「ありがとうございます、来年は優勝をいただきますわ♪」  エリザベスが盾を受け取ると拍手が起こる。  「三位は王道館高校、惜しかったが各自の健闘は見事だった」  「ありがとうございます」  牛田が賞状を受け取ると、最後の拍手が起こる。  「各校の選手諸君、勝っても驕らず負けても腐らず今後も切磋琢磨して欲しい」  権八のスピーチが終わり、これにて今年の三校戦は終了した。  牛田達の王道館チームは、行きつけのお好み焼き屋で打ち上げに向かった。  サリ女チームは、寮の門限に間に合わせるべく猛スピードで帰って行った。    そして椿原は山津会長が仲間達に語り掛けた。  「皆お疲れ様、私は不覚を取っちゃったけど優勝できたしめでたしね♪」  山津会長が皆を労う。  「他のヒーローとバトルってのも面白かったぜ♪」  高速飛車は笑顔でサムズアップ  「僕はもうこりごりだよ、疲れるし」  夢田希は、一種目だけの参加だが懲りたようだ。  「貴重なデータが取れました、実家でスーツを改良してきます」  マルタは、今回の敗北を機にスーツを改造する意欲を見せた。  「何と言うか、他の学校のヒーローも凄かったなリンちゃん」  「そうだね、サリ女がヤバかった」  竜也とジークリンデは感想を漏らす。  「うんうん、色々あったわね♪ それじゃあ皆、残りの夏休みを楽しんでね♪」  山津会長がまとめて、椿原チームも各自で解散となった。  この三校戦での他校生との交流が、後に竜也達の力になる事はこの時はまだ二人は知る由もなかった。
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