第3話 クラスチェンジ 幻想科

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第3話 クラスチェンジ 幻想科

 月曜日、椿原市立(つばきはらしりつ)ヒーロー高校の幻想科(げんそうか)に激震が走る! 「大変だよ! 留学生と転科の子が来るって!」 赤紫の髪に猫耳の美少女が叫びながら入ってくる。 「おいおい、留学生ならわかるがここに転科って珍しくね?」 「何でも、留学生がドラゴンで転科はそのパートナーの竜騎士だとか?」 「竜騎士や妖精騎士とか騎士系は確かに、この科だからな」 生徒達がワイワイ騒ぐ。 教室の戸が開き、グレーのスーツを着たピンク髪の可愛いお姉さんと言った風体の 先生が入って来た。 「おはようございます、今日は皆に新しい仲間が加わりますよ♪」 先生が笑顔で語る。 ピンクのブレザーに赤いスカートと言う女子の制服に身を包んだジークリンデが 片手に鞄を担ぎもう片方の手は竜也の手を繋いで彼を引き連れて入って来た。 「グーテンモーゲン、私はジークリンデ・フォン・ファフナーよ宜しく♪」 「あ~、基礎科から転科した岸野竜也ですよろしく」 「私はドラゴン、彼は竜騎士♪ 私達は夫婦なのでちょっかいかけないでね、邪魔する奴らは焼いたり蹂躙したりするから♪」 ドラゴンらしく尊大な態度で、赤い角を生やし牙を剥いた笑顔で口からちょろっと黒く燃えるブレスを見せるジークリンデ。 「リンちゃん、クラスの皆を威嚇すんなよ!」 そんな彼女を竜也がいさめる。 「え~? だって、クラスの奴らに私とたっちゃんの邪魔されたくないもん」 「仲間になるんだから、駄目だって」 「ぶ~っ! わかったわよ」 それでもちょろっとブレスを吐きつつ、竜也の言葉に従うジークリンデ。 「はい♪ 皆、ドラゴンは危険生物なので取扱に注意しましょうね♪」 先生のまとめの言葉にクラスメート達が納得した。 クラスの皆がジークリンデを危険物、竜也を安全装置と認識した所で 竜也は、一番後ろの端の席に着いた。 ジークリンデは、同じく後だが真ん中の列だった。 幻想科は女子率が高いクラスなので、彼女の周りの席は皆女子だった。 ジークリンデは、竜也の隣ではない事にめっさ不満顔をしていた。 「よう、たっちゃん♪ お前も大変だな~♪」 竜也の方に振り返って話しかける日本人の男子生徒。 「ああ、烈太(れった)か宜しく」 「おう、頑張れよドラゴン係♪」 烈太と呼ばれた生徒が笑って前を向く。 「炎君、交流は休み時間にしてね♪ それじゃあHRを始めま~す♪」 先生が烈太こと炎烈太(ほのお・れった)を注意してHRが始まった。 一時間目の数学、教師が黒板に問題を書きジークリンデに当てる。 「はい、この問題はこう解きます」 カッカッカッ! と音を立てて答えを書くジークリンデ。 「正解」 自己紹介とは打って変わって、主に竜也へ可愛らしい笑顔を見せるジークリンデ。 この時、竜也以外のクラスメイト達はジークリンデが馬鹿じゃない事に驚いた。 休み時間、ジークリンデにピンク髪の女子が話しかけて来た。 「久しぶり、私のこと覚えてる?」 「あん? もしかして、花ちゃん?」 「そう、春小路花(はるこうじ・はな)♪」 「何、たっちゃんなら渡さないけど?」 「と、取らないよ~! わ、私クラス委員だから宜しくね♪」 「はいはい、よろしく」 小学校時代の同級生であり、当時クラスで結婚したい女子ランキング一位だった花を睨むジークリンデ。 「あれ、相変わらずだな?」 花とジークリンデのやり取りを烈太がみやる。 烈太も竜也達とは小学校からの付き合いで、彼は花推しだった一人。 「まあな、烈太は超人科じゃなかったんだ?」 「ああ、俺はただの発火能力者じゃなくて精霊使いだったんだ♪」 「そっか、俺はまあこんな感じ」 炎を出して見せる烈太に、竜也はジークリンデと同じ赤い角を頭に生やして見せる。 「格好良いじゃん、能力ゲットおめでとう♪」 「ああ、ありがとう」 「そういや、チェインの登録しようぜ」 「ああ、わかった」 互いのスマホを出してアプリを出し連絡先の登録をする。 「ボヤッターもやっとくべ」 「そうだな」 こうして、SNSの繋がりを済ませる竜也と烈太であった。 そんな竜也達のやりとりをジークリンデは黙って見ていた。 竜也の交友関係を邪魔して嫌われたくないからだ。 「たっちゃん、私達もやりましょう♪」 ジークリンデが自分のスマホを出す。 「あれ、リンちゃん? 暗黒の竜騎士フリーデン公式アカウントって何?」 「私達のヒーロー活動用の公式アカウントよ、活動内容アップしてるんだから♪」 ヒーローもSNSを使って活動せねばならない時代になっていた。 「えっと、俺達こういうの作って良いの?」 竜也がジークリンデに尋ねる。 「も~♪ 私達は、学生だけど一応は国際竜騎士連盟に所属してるからこういうの作って活動アピールをするのは義務よ♪」 さらりと自分達はプロだとアピールするジークリンデ。 「そ、そう言えば書類とか書かされたり制服みたいなのや紋章を貰ったな」 竜也が怪人退治から帰宅後の事を思い出した。 「へ~♪ お前らもう所属とか決まってるんだ、早いな」 烈太が感心する。 「ああ、竜騎士になった時点で魔法で自動的に登録されるみたい」 「そっか、まあ御勤め頑張ってな♪」 「いや、受刑みたいに言うなよ」 竜也は呆れた。 そして午前の授業は無事に進んで行き昼休み。 「たっちゃん、お昼よ♪」 ジークリンデが、大きめの弁当を持って竜也の所へ来た。 「安心して、私の料理の感覚は日本人だから♪」 「俺、弁当あるんだけど?」 自分の小さい弁当を出して見せる竜也。 「知ってる、お義母様のは私も研究用にもらうからこれは二人の共用のおかず」 そう言って弁当を広げるジークリンデ、サラダや魚のほぐしご飯などドイツは何処へ行ったというほど日本的なメニューであった。 「本当に、日本と変わらないな」 竜也が驚く、てっきり肉が多いのかと思っていた。 「でしょ~♪ 私の胃は日本給食に染まったから向こうの料理が合わなくて」 「それは、苦労しただろうな」 食事情の違いに想いを馳せる竜也。 「私の作ったマグロ大根、食べて見る~♪」 言外に子犬のように食べて、食べてと伝えてくるジークリンデ。 「いただきます、この煮物美味いな♪」 竜也が彼女の料理を褒めた時、ジークリンデがドラゴンの尻尾を出して振る。 「それじゃあ私もお義母様の味の研究で、いただきます♪」 ジークリンデも竜也の弁当から卵焼きを取って食う。 「砂糖と出汁の割合がちょうど良い、これがお義母様の母の愛なのですね♪」 卵焼きの美味さに感動するジークリンデ、そんなこんなで昼休みは平和に終わった。 最後の授業は、伝承学で担当の先生は虹色の髪と背中に蝶の羽と持つ男性だった。 「それでは岸野君、妖精の弱点は何かな?」 「手に入りやすい物だと鉄だったと思います」 「うん、正解の一つだね他にも塩などの弱点があるのでこれから勉強して行こう」 やり取りを終えて次へと進む。 海外だと妖精が畑とかに悪さするのよ、ジークリンデがテレパシーで竜也に教える。 「そこ、テレパシーは傍受されないように使おうね」 先生がジークリンデを注意した。 そして妖精やヨーロッパの歴史や豆知識などを教わり、授業が終わった。 「は~っ、専門科目が付いて行けない」 竜也は机にうなだれた。 「大丈夫、私が教えてあげるから大体あっちの中学でやってたし」 ジークリンデが竜也を慰める。 「ああ、頼むよマジで魔法とかわかんない」 幻想科の授業は竜也にとって未知の世界であった。 放課後、授業から解放された生徒達が部活や遊びに励む時間。 竜也はジークリンデと購買で教科書を買っていた。 「うへえ、転科したから専門科目の教科書を買う羽目になるとは」 「私もまだ買ってなかったから一緒に買っちゃおう♪」 学科と学年ごとにコーナーが別れていたので、目的の物は簡単に手に取れたが彼らが購入した教科書と資料集二人分は結構なお値段だった。 「専門書って、結構な値段するんだな」 「それだけの価値があるから、この猿でも使える一般魔法とか特に」 「そういや、魔法使ってATM壊す強盗とかいるからな」 「日本でも魔法の学校とか増えてるから、悪用する奴も増えるのよね」 二人で下校しながら語り合う。 「そういや、リンちゃんは部活とか入る?」 「たっちゃんと一緒ので、もしくは作ろうか夫婦部とか♪」 「俺ら以外誰が入るんだよ♪」 二人はそれぞれの家に帰りついた。 竜也は自室に帰り私服に着替えると、買って来た教科書類を本棚へ入れる。 「そういや、こっちも読まないとな竜騎士連盟のテキスト」 竜也の机には一冊の厚めの本があった、その名は『竜騎士教本』と竜騎士とは何か と言う事が歴史から書かれた大事な資料である。 「そういや制服、礼装ってのも着ないといけないんだよな」 竜也のクローゼットには、白い軍服の様な詰襟ジャケットと黒のスラックスに青いマントが学生服と並んでハンガーにかけられていた。 他にも簡易的な物としてベストやスタッフジャンパーが増えており、そのどれにおいても黒いドラゴンと海と太陽が描かれた紋章のワッペンが付いていた。 「世界的に見て岸野家の紋章が、この黒いドラゴンのになるのか」 竜也の家は、竜騎士としてはジークリンデの家の分家扱いにあるらしく彼女の家の紋章である黒いドラゴンの図案から新たに描き起こされて贈られた。 「まあ、リンちゃんと付き合うって決めたから覚悟はしていたが組織との付き合いって色々面倒くさいな」 国際竜騎士連盟と言う、竜騎士の冒険者ギルドのような組織に加わった竜也。 学校でも学校外でも、面倒な出来事が彼を待ち構えていた。 「そうだ、試しに魔法を使ってみるか衣装交換(クローズ・チェンジ)ッ!」 頭の中で来ている服を入れ替えるイメージをして呪文を唱える。 すると、竜也の服装がシャツとストレッチパンチから詰襟ジャケットとズボンと青いマントの礼装フル装備状態に変化する。 ストレッチパンツは、スラックスと交換でクローゼットのハンガーに掛かっていた。 「……う、魔法って便利だけど何か減った感じがする」 魔法を使った事で疲労を感じた竜也はベッドの上に倒れこんだ。 「たっちゃん、魔力が変動したけど大丈夫っ?」 ドタドタと階段を駆け上がって、ジークリンデが部屋に入り倒れ込んでいる竜也を発見した。 「この魔力は、魔法による疲労っ!」 竜也を起こしてキスをするジークリンデ、一方の竜也はジークリンデにキスをされた事で覚醒し驚き彼女の背中をタップした。 「……ふう、堪能した♪」 竜也から離れたジークリンデ。 「何がどうなったのかわからない」 「たっちゃん、魔法使ってMP消費して倒れたんだよ!」 「その説明で分かった、助けてくれてありがとうリンちゃん」 「もう、初心者は魔法は迂闊に使っちゃ駄目だからね!」 泣きそうな顔になるジークリンデを竜也は抱きしめた。
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