0人が本棚に入れています
本棚に追加
最終話 ヒーロー道は続く
「メリ~クリスマ~~~ス♪」
ファフナー邸で朝からジークリンデが叫ぶ。
「うん、メリークリスマス♪」
竜也も挨拶を交わす、今日はクリスマスイブ。
「補習も半分終わったし、今日と明日は楽しもうねたっちゃん♪」
「ああ、家でパーティーだな♪」
ジークリンデの言葉に竜也が頷く、補習もない、事件もまだ起きていないと
二人は平和なクリスマスを過ごす気でいた。
「黒月が何か言いたそうな顔してるけど、フラグは立てるなよ?」
竜也が黒月を見て釘を刺す、言葉には力があり言ったら不味いフラグになる言葉がわんさかある。
「……う、うむ! 気を付けるぞ!」
黒月が頷く。
「テレビもつけないでね、フラグになるから」
ジークリンデが釘を刺す、彼女もヒーローを経験して来て段々フラグと言うものがわかって来ていた。
「取り敢えず、ご飯を食べようか?」
「そ、そうだね♪」
「うむ、そうであるな♪」
三人は朝食の用意を始め、パンと牛乳で軽く済ませた。
敵はフラグ、フラグが立てば事件が起こる。
竜也とジークリンデは、フラグを立てないようにすれば平和に休めるはずだと考えていた。
「休みをうまく取るのもヒーローとして大事だよね♪」
「ああ、皆どこも休みを取るのに苦労してるからなヒーロー業界」
「休みの日でも敵が出たら休みにならないって、あるあるだよね」
クリスマスイブはヒーローにとって、一番休みたいけれど事件が起きて休めない日
である。
アメリカでは、ハロウィンとクリスマスイブはヴィランがド派手に暴れ出すし日本でも悪の組織が愉快犯的に悪さをする。
悪者の人っていつもそう! クリスマスイブのデパートやホテルを何だと思ってるんですか!
「でもこういう日だしデートとかしたいよな、ケーキも買いに行かないと?」
竜也がスマホで漫画を読みながら呟く。
「……うん、そうだよね♪ クリスマスと言ったらデートだよね♪」
ジークリンデも尻尾を出して振る。
「これ! お主の尻尾は床が壊れるであろう!」
黒月が突っこむ。
「家は丈夫だから平気! あんたは留守番だからね!」
ジークリンデが叫ぶ。
「そうだな、いつも通り何かあれば呼ぶからそれまで頼むぜ」
竜也が黒月に頼む。
「やれやれ、まあ留守は任せよ」
黒月が呆れつつ二人を見送った。
彼らは気づいていなかった、自分達がクリスマスの魔力に浮かれてフラグを踏んでいた事に。
竜也達がケーキを買いに商店街に足を踏み入れた時、周囲の景色が紫色に変わった。
「ケーッケッケ♪ この商店街を売れ残りケーキにしてやるジャーク♪」
ケーキ屋の屋根の上で、頭がクリスマスケーキの怪人が高笑いをしていた。
「待ちなさい! そんな事はさせないんだから!」
そこに響くのは美少女の声、ケーキジャークが声の方向に目を向ける。
「春のエレメント、マジキュースプリング!」
ピンクのバイザーが付いた白いヘルメットを被った、フリフリドレスの魔法少女が叫ぶ。
「夏のエレメント、マジキューサマーもいるよ♪」
バイザーが青以外は同様の衣装の少女も叫ぶ。
「秋のエレメント、マジキューオータムでございます♪」
黄色バイザーの少女は礼儀正しく名乗る。
「冬のエレメント、マジキューウィンター」
紫バイザーの少女は何処か物静かだ。
「四季の魔法で平和を守る、マジキュー4が相手だよ♪」
青バイザーのサマーがチーム名を名乗り、怪人との戦いを始めた。
「うるさい奴らめ、まとめてケーキにしてやる!」
ケーキジャークが4人をひとまとめにしてケーキに変えてしまう。
「あれ、花ちゃんだ! 助けよう、たっちゃん!」
「ああ、同級生だしな竜結っ!」
竜也達が変身して飛ぶ。
「邪魔させてもらうぞ、ケーキカットだ!」
フリーデンが、ケーキ化したマジキュー4を傷つけぬように四等分に切り分ける!
すると、彼女たちのケーキ化が解けて元に戻った。
「ありがとう、フリーデン♪」
スプリングが代表して礼を言う。
「ああ、悪いがデート中なんでさっさと頼む」
「うん、ジークリンデちゃんにもお礼しとくね♪」
「助かった、私って人徳ある~♪」
「いや、スプリングのコネじゃん」
「サマーちゃん、ポジティブです」
そんなマジキュー4を背にジークリンデの所に戻るフリーデン。
「おのれ、マジキュー4!」
ケーキジャークが吠える。
「うるさい! 私達だって、これからパーティーするんだからね!」
サマーも怒鳴り返す。
「皆様、マジキューバズーカのご用意を!」
オータムの言葉に三人が応じて四人でバズーカ砲を構える。
「マジキューバズーカ、レインボーベリー!」
スプリングが叫び、虹色に輝く巨大な苺がバズーカ砲から放たれてケーキジャークを粉砕した。
こうして、商店街を荒らそうとしたケーキジャークはマジキュー4の必殺バズーカにより葬られたのであった。
「ふ~、街も元に戻ったしお店でケーキ買おうねたっちゃん♪」
「ああ、これでもう終わりだろうし♪」
特殊空間が解けて元に戻った商店街で、竜也達はケーキを無事に買えたのであった。
ケーキを買った二人が次はディナーだなと商店街を進む。
「やっぱり、クリスマすならチキンかなあ?」
「リンちゃん、それはもしやフラグじゃね?」
肉屋へ向かいながらジークリンデがフラグとなる台詞を呟いてしまう。
「クリスマスは、七面鳥だろうがターキ~~~ッ!」
肉屋の前で七面鳥の怪人が叫びを上げると、周囲の人間達の口に七面鳥のソテーが咥えさせられた!
竜也達はヒーローなので、七面鳥怪人の攻撃は効かなかった。
「げげ! 貴様らもしやヒーローか!」
竜也達を目撃した七面鳥怪人が翼を広げて構えを取る。
「その通りだよ!」
「やっぱり出た~~!」
再びフリーデンとドラゴン少女に変身する二人、だがその時またもやどこかの屋根の上から声が響いた。
「待ちなさい、タタリ党の怪人! 鳥忍戦隊バードニンジャーが仕置きします!」
声の主はバードクレーン、四人の仲間を連れての登場だ。
「また知り合い! そっちの敵なら、そっちで倒してよ!」
ジークリンデがバードクレーンにキレる。
「ヒーローは助け合い、効率よく倒すから協力しなさい!」
バードクレーンは動じなかった。
「むっか~~っ! 来年の三校戦でボコボコにしてやるからね!」
ジークリンデがキレて七面鳥怪人にドラゴンブレスをぶっぱなす。
「アバ~~~ッ!」
その一撃は、七面鳥怪人を跡形もなく消滅させた。
「……流石は三校戦の優勝チームね、他の場所へ行きましょう」
ジークリンデが怪人を倒したのを見届けると、バードニンジャー達は消え去った。
「うわ、忍者汚いな!」
元に戻った竜也が呟く。
「まったくだよ、ブレス吐いたらお腹減った~!」
「お疲れ様、じゃあまずはどこかで昼飯にしようか?」
「うん、お肉食べたい♪」
「わかった、じゃあこの先の焼肉屋かな♪」
竜也達は夕飯の買い物を後回しにして、焼肉屋に向かう二人。
店の名は牛丸と言った。
「ここ、王道館のあの人のお家?」
「が、経営してる店の一つらしい」
和風な店構えの焼肉店、牛丸。
ハクギュウジンこと、牛田猛の家が経営しているとは聞いてはいたが入るのは初めてだった。
「食べ放題ランチ二つ下さ~い♪」
ジークリンデが元気よく注文する。
「お待たせいたしました♪」
最初の肉とご飯二人前を運んで来たのは、ガタイの良いイケメンマッチョの牛田本人だった。
「牛田さん、どうもです」
竜也が驚く、経営者一族が何故店員を?
だが、牛田は微笑むだけで去って行った。
スタッフルームから、竜也達の席の番号にサービスをと言う声が聞こえると
次々と高い肉が運ばれて来る。
「え、ちょっとマジですか?」
「ラッキー♪」
驚く竜也と喜ぶジークリンデ、店長らしき人からはサービスですと言われる。
「またのお越しを、お待ちしております♪」
帰りには牛田から、ドカンと牛肉の塊をお土産にもらうおまけ付きで二人はランチの食べ放題を楽しんだのであった。
「夕飯、もうこの肉で良いよな?」
「そうだね、これからはクリスマスはビーフ一択だよ♪」
ケーキと肉を手に入れた二人、次は忘れてはいけないプレゼントだ。
「黒月、ケーキと肉を冷蔵庫へ入れておいてくれ」
竜也が自分の影に語り掛けると黒月の鎧が浮き出てくる。
「相分かった、お二人は楽しまれよ♪」
肉とケーキを受け取った黒月は再び影の中に沈んで行く。
「うん、こういう時に黒月って便利だね♪」
「いや、そう言うのじゃないんだけどね」
二人は語り合いながら商店街を出て、駅前のデパートを目指した。
だが、ここで最後のフラグが発生した。
「セ~チセチ♪ クリスマスよりも数の子セチ~♪」
駅前の広場で、ニシンの頭を持ち左腕がバルカン砲になっている怪人がバルカン砲から数の子をばら撒いて周囲の人々を黄色に染めていた。
「今度は、ホロコーストの怪人~っ!」
「マジかよ、食い物を粗末にしやがって許せねえ! 竜結っ!」
怪人のベルトのHマークから、ホロコーストの怪人だと察する二人。
これが今日最後の変身だと意気込み、竜也はフリーデンへと変身する。
「貴様の野望はそこまでだ! 暗黒の竜騎士、フリーデン参上!」
フリーデンが名乗りを上げる。
「出たな竜騎士め、このニシンバルカン様がハイウェイダーの前にまずお前を血祭セチ~ッ♪」
ニシンバルカンが、バルカン砲をフリーデンに向けて発射する。
「お前如き、先輩が相手をするまでもない!」
フリーデンが愛刀ファングシュベルトを振るい、数の子の弾幕を全て払い落とす。
「これで終わりだ、ドゥンケル・ヒンリヒトゥングッ!」
ファングシュベルトの刀身が漆黒の闇に染まり、黒い風を纏っってニシンバルカンへと突進したフリーデンの一閃が怪人の首を切り落とした。
「はわわ~~~♪ やっぱり、格好良い♪」
ジークリンデは、フリーデン御戦いに見惚れていた。
変身を解いた竜也はジークリンデの所へと戻る。
「取り敢えず、これで終わりかな?」
「うん、きっとそうだよ♪」
「プレゼントはどうしようか?」
「今日はイブで前夜祭だよ、明日のクリスマス本祭に一緒に買いに行こう♪」
「うん、それもありだなイブはもう家でパーティーしよう♪」
そうして二人は手を繋ぎ、デパートに背を向けて家路へと歩み出した。
高校一年生の春から始まった二人の事実上の夫婦関係とヒーロー道は、これからも続いて行く。
幼馴染のドラゴン少女と行くヒーロー道 完
最初のコメントを投稿しよう!