第4話 レベリングスタート

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第4話 レベリングスタート

その後、復調した竜也はというと夕食後に家のリビングにてジークリンデや家族の前での一人ファッションショーをさせられていた。 「迂闊に魔法使うなって言ったじゃん!」 「魔力タンク兼、指導役の私がいるから大丈夫♪」 「自分の事をタンクとか言うな!」 「はい、次は夏用の衣装に着替えてっ!」 「勘弁して、脳が疲れるっ!」 竜也は次々と魔法で衣装を着替えさせられていた。 「目線頂戴、こういうポーズ取って♪」 「ドイツのクラウス達にも動画送るからな」 「はい! たっちゃん、そこでくるっとターン決めて♪」 「そろそろ、マジで疲れて来た」 「もうちょっと頑張ろう、魔法は使う程鍛えられて使える魔力が増えるから♪」 監督はジークリンデで動画撮影は竜也の父が、写真は母がと羞恥プレイである。 だが、これは竜也自身のMPを増やす訓練でもあった。 「あ~、ヤバイはもうダウン」 「はい、魔力注入♪」 竜也がダウンしかける度にジークリンデが支えに行き、減ったMPをブースト。 「もう、衣装も尽きたはずだよな?」 そろそろ終わるかと思った竜也、だがそうはいかなかった。 「じゃあ次は、武器召喚の魔法を行って見ようか♪」 「ごめん、MPがあってもHPがもう駄目」 竜也はへたり込んだ、すると父の応児が竜也に近づく。 「HPか、なら父さんが岸野流古武術(きしのりゅうこぶじゅつ)に伝わる活法で回復するぞ!」 「お父さん、お母さんと結婚するのに必死に修業してくれたのよ♪」 「何と感動的なお話、素晴らしいですお義父様♪」 「いや、馴れ初めは良いから休ませてっ!」 応児が息子の胸にある壇中(だんちゅう)と言うツボへ、貫手を繰り出すと同時に気を流し込む。 「……ぐへっ! な、何か体から出てるっ!」 竜也の体から赤い色のエネルギーが噴き出した。 「その体から出てるエネルギーが気よ、これから使い方とか覚えましょうね♪」 「あ、私も使ってみたいかも♪」 「いや、これ止め方とかどうするのさっ!」 結局、気を出し切った竜也はダウンし翌日は筋肉痛や体調不良に見舞われた。 発見した両親やジークリンデの対処のお陰で、どうにか三割程度までに体調を回復した竜也はジークリンデに介護されて学校へたどり着いた。 「リンちゃん、クラスの皆は敵じゃないから」 「たっちゃんは私が守るから」 昨日より機嫌が悪いジークリンデに、ビビるクラスの仲間を見つつ 自分の席へと付く竜也。 「保健室行くか?」 烈太が心配して声をかける。 「ああ、そこまでじゃないと思う魔法の練習して疲れただけ」 「無茶すんなよ、こいつ飲んどけ」 ドリンク剤を竜也に渡す烈太。 「……あ、なんか来た!」 ドリンクを飲んだ竜也の体に活力が湧いてくる。 「エナジーポーション、購買でも売ってる奴だから効くだろ?」 「ああ、何か回復した感じがする」 竜也は体の調子が回復したのと同時に、ジークリンデが安堵したのを感じた。 「ふう、炎の精霊使いだが火消しは成功っと♪」 「うん、お前マジでクラスの消防士だよ♪」 竜也は烈太と拳を軽くぶつけ合う。 「良かったね、ジークリンデちゃん」 竜也を案じていたジークリンデに声をかける花。 「……うん、良かった」 「良かったね♪」 竜也の復調により、ジークリンデが教室で暴れなくて良かったと彼らと付き合いがない生徒達は安堵した。 そして平穏な時間が過ぎ下校する竜也達、そんな竜也の前に空から降り立つ人がいた。 「久しぶり、竜也君♪」 竜也に挨拶をするのは高そうな黒のスーツを着た金髪の爽やかなイケメン紳士。 「お久しぶりです、会長って呼んだ方が良いですかクラウスおじさん?」 「お父さん、何しに来たの~?」 ジークリンデが不満げな顔をする。 「ちょっと待って、娘にそう言われるとショックなんだが?」 「リンちゃん、駄目だよ?」 「ぶ~、たっちゃんはお父さんに甘いよ~!」 「うん、竜也君は良い娘婿だ♪ まあ、私が来たのは竜也君のレベリングだ」 クラウスが用件を告げる。 「え~、弟の養育はどうしたのよ?」 「それはお母さんが今独り占め中でな、お父さん寂しい」 ジークリンデとクラウスの親子漫才に置いて行かれる竜也。 「えっと、俺に稽古を付けてくれるんですかね?」 竜也が本題に入ろうとする。 「ああ、親友の息子にして我が可愛い娘婿よ♪ そうなんだ、やはり君を竜騎士として導くのは私の役目だと思ってね♪」 クラウスが笑顔で竜也の肩に手を乗せる。 「え~、私からたっちゃん取らないでくれます~? お母さんに言いつけるよ?」 「待つんだ娘よ、これは家族としても連盟としても大事でな」 クラウスは娘と妻に弱かった。 「おじさんの言う事を聞こう、俺はありがたく受けるよ」 「ぶ~! ぶ~!」 「うん、やっぱり君は私が見込んだ少年だ♪ そういうわけだから、ジークリンデも話を聞いてくれ」 娘をなだめるクラウス、威厳も何もあったもんじゃない。 「取り合えず、道端なんで三人でリンちゃんの家へ帰りましょう」 「ああ、家族皆で我が家へ帰ろう♪」 世間の目が怖いので、三人でファフナー邸へ急いで帰った。 「で、会長の仕事はどうするの?」 「後進の育成も仕事さ♪」 「職場に電話しておくね、お・と・う・さ・ん♪」 「や~め~て~!」 「はいはい、コントは良いから」 ファフナー邸のリビングでの親子漫才に呆れる竜也。 「そうだな、まあ今後しばらく週三日ほど私が稽古をつけると言う事で」 「俺としては、問題ないですが」 「月一回で、娘夫婦の仲に割り込まないでくれる?」 「わかった、月三回で手を打ってくれ娘よ」 「お小遣いも宜しく♪」 「仕方ない、飲もう」 親子漫才の果てに、手は打たれた。 そして、クラウスの特訓の日。 クラウスと竜也はファフナー邸の庭で対面していた。 「それでは行こうか、竜結っ!」 クラウスが赤いドラゴンを模した装甲を身に纏う。 「竜結っ!」 竜也もフリーデンへ変身する。 赤と黒、二人の竜騎士が相まみえる。 「紅炎の竜騎士、ブレンネン!」 「暗黒の竜騎士、フリーデン!」 互いに名乗りを上げる。 「まずは基本的な武器の使い方だ、爪を出したまえ」 ブレンネンがそう言って、己の両の手甲を変形させて爪状の武器を出す。 フリーデンも真似をして爪を出す。 「竜の爪、近接格闘用の武器で殴る、刺す、斬る、受け流すと万能だ」 「はい、壁登りもできるんですよね?」 「そうだね、後は伸縮自在なので地面などを掘るのにも使える」 この爪を用いた竜爪格闘術(りゅそうかくとうじゅつ)と言うと聞き ブレンネンから突きや蹴りに受け、爪を絡めての関節技や締め技に投げ技と 一通り教わる。 「そして、肝心なのは爪にブレスのエネルギーを纏わせたり爪から出せる事だ」 ブレンネンが、ドラゴンの頭を模した兜から炎を出して爪に纏わせる。 「何か、殴る前に拳に息を吹きかけるみたいですね」 ブレンネンを真似てこちらも爪に闇を纏わせた。 「ああ、我が師でもある君の母方のお祖父さんがやっていたよ♪」 「なるほど、何か繋がりがあるのが嬉しいです♪」 「私もだよ!」 互いに爪にエネルギーを纏わせてた状態で、組手に入る二人。 交互に突きや蹴りを繰り出し、ブレンネンがフリーでの姿勢や体の使い方を 矯正して行く。 そして、小一時間ほど組手をして双方が変身を解いた。 「ふう、お疲れ様だ今後も練習に励んで欲しい」 「はい、ありがとうございました♪」 クラウスに礼を言う竜也、こうして師匠を得た竜也のレベリングが始まった。 クラウスの指導を受けた次の日、休み時間の教室にジークリンデが竜也にの席にやって来た。 「たっちゃん、私も教えるから稽古しましょう♪」 「ああ、ありがとう」 素直に喜んだ竜也の気持ちがジークリンデに伝わる。 「……け、稽古は厳しく行くからねっ!」 ツンな台詞を吐くジークリンデに微笑む竜也、二人はクラスの面々からリア充めと妬まれた。 「お~お~、いつも仲良いな二人共♪」 烈太が二人をはやす。 「何よ、あんたも彼女探せば良いじゃない?」 ジークリンデが烈太に返す。 「ああ、俺も付き合っている子がいるから今度紹介するぜ」 烈太は、懐から金色に輝くオイルランプを取り出して見せた。 「もしかして、ランプの精ってのか?」 竜也が尋ねる。 「ああ、俺のイフリータのイブリンには今度合わせるよ」 烈太が照れた。 「精霊って、ランプの精なんだ?」 「サラマンダーとかも契約してる、近い内に驚かせてやるからな」 烈太が笑って答えた。 学校でそんなやり取りをした後、竜也はファフナー邸に連行された。 「まずおさらい竜騎士は、竜に乗るだけじゃなく竜の力を使える騎士なの」 広い庭でドラゴン少女になったジークリンデが語る。 「角や爪やブレスに牙に尻尾に翼、鎧は全部まとめだっけ?」 竜也が確認の為に聞く。 「他にも、通常は見えない物がみえたりあらゆる生き物の言語がわかるとか色々ね」 ジークリンデが補足する。 「俺もリンちゃんみたいな角が生やせるのは、竜騎士自体が竜になれるんだっけ?」 竜也の言葉にジークリンデが首肯する。 「ちなみに、うちの弟みたいにドラゴンと竜騎士の間にできた男の子は竜の子って言って私みたいにドラゴンの力が使えるの♪ 私達にも息子が出来たら弟と同じで龍の子になるわ♪」 頬を赤く染めながらキャーキャー照れるジークリンデを、竜也は可愛いと思った。 「ドラゴンと言えば、まずはブレスね♪」 ジークリンデが口を開いて黒いエネルギーを見せる。 「こう言う感じ?」 竜也も、真似してみる。 ジークリンデが虚空に向けて、口の中で作った黒いエネルギーをビーム状に吐き出して見せた。 「コツは、吐く時に感情を込めて吐き出すとブレスの威力や射程があがるわ♪」 ジークリンデがスッキリした笑顔で語る。 「口以外からも出せるのかな?」 竜也が疑問に思った事を聞いてみる。 「うん、他のヒーローの光線技みたいに腕とか武器も経由して出せるよ♪」 「ありがとう、口以外からも出せるように試してみる」 「そういえばたっちゃん、タイヨウザーの日射ビーム好きだったね♪」 「ああ、拳を構えてパンチと共に出す」 憧れのヒーローの動きを真似て拳を突き出すと、竜也の拳から黒いエネルギーのビームが放出された。 「危ない!」 竜也が放ったブレスの前にジークリンデが立ちふさがり、口を開けて飲み込んだ。 「な、リンちゃん!」 「大丈夫、私とたっちゃんにお互いの攻撃は効かないから♪ 魔力補給と同じだから 安心して♪」 「……ごめん、次からは気を付ける」 「うん、出力の制御も覚えて行こう♪」 竜也とジークリンデは抱き合う、力を得てまだ一月も経ってはいないが竜也のレベルは上がって来ていた。
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