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第7話 隣の超人科
「良かったじゃん、前のクラスの奴らとのケリがついて」
「いや、喧嘩に勝ったとかじゃねえから」
幻想科の教室、竜也は基礎科との問題に決着が付き晴れやかな気分だった。
「まあ、これでたっちゃんも幻想科としてやっていけるな」
「ああ、これからだ」
烈太に答える竜也。
「今日の体育、超人科と合同でサッカーだから気合い入れて行こうぜ♪」
「超人科か、巨大化とかテレポートとか幻想科とどっこいの謎クラスだな」
「宇宙人も超人科だしな、逆に神格はうちの幻想科って基準がわからねえ」
烈太の言葉に竜也は頷いた。
幻想科は普段通り、一般科目に加えて魔法や伝承に神格学と専門科目の授業を進めて行った。
「昼飯前にサッカーか、面倒だな」
体操着姿の竜也はやる前から疲れていた。
校庭に集った幻想科と超人科の男子生徒、幻想科は男子が五人しかいなかった。
「先生、幻想科は人数が少ないから超人科と混成チーム作って良いですか?」
超人科の生徒が提案すると体育教師が許可した。
六人ほど超人科の生徒が幻想科に加わる。
「と言うわけで、超人科の夢田希だよ宜しく♪」
金髪で小柄の美少年、夢田が声をかけて来た。
他の超人科の生徒達はそれぞれが適当に挨拶をした。
「俺は岸野、宜しく」
竜也が希に声をかける。
「お~♪ 噂の竜騎士じゃん、よろしく~♪」
希の方は、竜也を知っていたのか笑顔で握手をして来た。
サッカー自体は能力を使用禁止なので、普通に試合が行われた。
「皆~♪ 前向いて行こ~♪」
いつの間にか希がキャプテン的な立ち位置になり、竜也は陽気な性格を
羨ましながらも真面目にディフェンダーを頑張った結果混成チームの勝利となった。
「あいつすげえな、何かキラキラしすぎだろ?」
「ああ、良いよなああいうキャラって」
試合が終わり烈太と竜也は希について話していた。
「いや~♪ 僕はそれなりかな~♪ きっし~もナイスプレイ♪」
希が竜也達に近づいてくる。
「どういたしまして、夢田君ってサッカー部?」
竜也が気になったので聞いてみる。
「希で良いよ♪ 僕は怪獣ハント部♪ こう見えても、巨大ヒーローなんだ♪」
「あ~、あのあちこち行って怪獣倒す部か」
烈太がなるほどと得心する、そういう部があったのかと竜也は思った。
「巨大戦できるなら学科関係ないから、暇なら遊びに来て♪」
希はそう言うと、自分のクラスの面々を追いかけて行った。
昼休み、竜也はジークリンデと昼食を取っていた。
「超人科ね~? 体からビーム出す奴が多いみたい」
「ああ、やっぱビーム出せる人達なんだ」
「あっちは校舎の地下に光線撃つ射撃場があるってのが、羨ましいよね」
「俺らもブレス撃ち放題とかしてみたいな♪」
竜也達は、隣の芝生の青さを感じていた。
だが、クラス全員のスマホにアラートが鳴り響き平穏が終わる。
「マジか、暴獣アラートだ! 皆行こうぜ!」
国が作ったスマホアプリ、暴走怪獣警報こと暴獣アラートが一斉に発動した。
それを合図に全員が変身し窓から飛び出すのと、空から地上へと落下して来る飛翔体が郊外の山中に衝突するのが同時だった。
飛翔体の落下地点から二足歩行の力士体形な青いガマガエルと言うべき姿の巨大な怪物が現れた。
「ち、出たわね化け物! たっちゃん、巨大戦のデビューよ!」
「待った、超人科から夢田君が飛び出してったぞ!」
「え? 仕方ない、バリヤー張りに行きましょう」
ジークリンデが悔しがりながらも光を纏いながらガマガエルの怪物、暴獣へと飛んで行く夢田を見送り竜也や幻想科の面々と暴獣を街へ入れないようにバリヤーを張りに行く。
一方、夢田は流星の如く青い光を纏いながら空を飛び己の姿を銀色の皮膚を持つ戦士へと変化し肉体を巨大化させて行き変身完了と同時にガマガエルの暴獣へと跳び蹴りをかました。
夢田希、彼こそは額と胸と下腹部に青い星型の結晶を持つ銀色の殺獣巨人ヘリオスマンであった。
「ゲゴ~~~~~ン!」
ヘリオスマンの跳び蹴りを耐えた暴獣ガマゲゴンがヘリオスマンへ殴り掛かる。
「させないよ、とりゃ!」
ヘリオスマン、ガマゲゴンの拳を受け止めてから敵へ足を絡めて投げ倒す。
「カエルだけに河津掛けってね♪」
ひっくり返されたガマゲゴンが舌を伸ばしてヘリオスマンの首を絡め取る。
「気持ち悪いな、ヘリオスビーム!」
額の星の結晶から青い色の光線を放射しガマゲゴンの舌を焼き切るヘリオスマン。
ガマゲゴンの舌が振動を立てて大地へと落ちる。
だが、ここでヘリオスマンの結晶体が下腹部から点滅を始めた。
「しまった! ビームのペース配分間違えた!」
ヘリオスマンが点滅に気付くと同時にガマゲゴンが起き上がり口から白いガスを
噴射しヘリオスマンを氷漬けにした。
「ヤバイ、助けに行こうリンちゃん!」
「オッケー、飛ばすね♪」
ドラゴンになったジークリンデに乗りフリーデンが、ヘリオスマンの元へ急ぐ。
「全力で行くよっ!」
ジークリンデが暗黒のブレスをガマゲゴンに放射して牽制、そしてフリーデンが愛刀ファングシュベルトを大上段に構えて跳ぶ!
ファングシュベルトの刃が黑く燃え上がる、更にジークリンデが吐いたブレスで天を衝くほどの巨大な闇の柱へと刀身が伸びる。
「こいつを喰らえ! ドゥンケル・ギヨティーネッ!」
闇の断頭台、と言うには巨大すぎる暗黒の刃が一閃しガマゲゴンの首と胴を泣き別れにした。
「決まったぜ♪」
「イエ―イ♪ 二人の勝利よ♪」
倒したガマゲゴンの頭に着地したフリーデンと人型に戻ったジークリンデが勝利のハイタッチを交わした。
竜也達が勝利を喜ぶ中、ヘリオスマンは駆けつけた仲間達により蘇生され夢田へと戻った。
「あの二人に持って行かれちゃったか、僕も光線技を鍛えなきゃ」
夢田は己を鍛える事を誓った。
竜也達は、停学処分になった。
「仲間助けに行って敵を倒したのに、納得行かないんだけど~!」
ファフナー邸の庭で竜也に不満を吐き出すジークリンデ。
「学校的に俺達は、分担を乱してバリヤー張りをサボって超人科の邪魔しただからね面倒だけど」
定額と言う不名誉に落ち込む竜也、校則では暴獣などの巨大な敵に対しては
幻想科がバリヤーを張って市街を守り超人科が敵と対決し装甲科が避難誘導や事後処理をする決まりとなっていた。
竜也達は思い切り校則をぶち破った為、功罪を差し引いて罰として停学一週間を受けたのだった。
「公立高校だからって、固すぎよ! 私らだって巨大な敵と戦えるんだから!」
「だよな、けど公立高校だから固くしないと駄目なんだろうね」
ジークリンデをなだめる竜也、だがまったく良い事がなかったわけでもなかった。
「学校的には駄目だったけど、竜騎士としては実績になったから良しとしよう」
「私、お父さんがドヤ顔するのが嫌なんだけど?」
「あ~? 俺らの実績、会長の実績になるからな」
「そこよ、私達の手柄がお父さんの手柄になるのが嫌なの!」
ジークリンデが再び怒り出す、竜也は地雷を踏んだことを嘆いた。
「そうだね、俺達は会長預かりだしね」
「これだから、組織ってのは面倒くさい!」
「いや、社会性は大事だし賞与出たから良いじゃん?」
「巨大怪獣倒して五千円の賞与は安すぎ~っ!」
「よしよし、リンちゃんは良い子良い子♪」
「ばぶ~~~~っ!」
「おぎゃ~~~っ!」
竜也はジークリンデに頭を噛まれた、誰に見せるわけでもない夫婦漫才であった。
「あたたた、まあ折角お金もらったしシューティングセンターでも行く?」
「うん、ガンガンブレスぶっぱなす♪」
そして二人は、駅前通りにある屋上複合施設へとやって来た。
受け付けを済ませて地下へ行くと、そこはゴルフの訓練場のような場所だった。
ただ、ゴルフの練習場と違うのは利用者のほとんどがヒーローで、変身した姿で銃や弓や己の体からエネルギーを放って的を壊している点だった。
そんな中、人間サイズで光線を出していた銀色の戦士が変身を解いた。
「あれ? 二人共、停学中じゃなかったの?」
銀色の戦士、ヘリオスマンこと夢田が射撃を止めて竜也達に声をかける。
「自主練だよ、俺達もドラゴンブレスを出せるから」
竜也が答える。
「そっか、僕の隣のコーナー空いてるから一緒にどう?」
「よっしゃ、バンバンぶっぱな~~すっ♪」
「……ド、ドラゴンの彼女さんは元気ありすぎだね」
夢田が渇いた笑いをこぼす。
「うん、まあ気にしないで」
ジークリンデと一緒にコーナーに入る竜也、夢田も再びコーナーへ戻る。
「まずは深呼吸、気持ちを込めて吐き出すっ!」
息を吸い、吐くと同時に突きを繰り出して拳から闇の光線を放つ竜也。
その一閃はポップアップされた的を一撃で粉砕した。
「僕も真似してみよう、変身」
人間サイズに変身した夢田ことヘリオスマン。
「レッドバースト!」
下腹部の星型の結晶を光らせ、突きを繰り出し拳から赤い光線を放射する。
「あ~! 何か真似された感じがする!」
ジークリンデが隣のヘリオスマンを見て文句を言う。
「いや、良くある出し方だから真似とか関係ないって」
そんなジークリンデを窘める竜也。
「ヒュペリオンビームッ!」
竜也達に構わず、今度は胸にある結晶から金色の光線を発射するヘリオスマン。
「隣がノリに乗ってる、私達もガンガン行こう!」
「いや、張り合うなよ!」
竜也の静止を無視し、ガンガンブレスを吐いて的を破壊するジークリンデ。
双方、一時間が過ぎると落ち着いた。
「ふ~、疲れた~! 喉が渇いた~!」
「張り合うからだよ、ジュース飲んで」
休憩コーナーで、ジークリンデにジュースを飲ませて休ませる竜也。
「あ~、すっきりした♪」
夢田の方は憑き物が落ちたかのような爽やかな笑顔だった。
「確かにそんな感じだな」
竜也が夢田に声をかける。
「うん、あの時は調子が悪かったけどもう平気♪」
上機嫌な笑顔で竜也に返事をする夢田。
「じゃ、二人は停学開けたらまた学校でね~♪」
竜也達に笑顔で手を振り立ち去る夢田。
「う~、私あ~言う奴苦手」
「まあ、眩しいよね陽気なオーラって」
夢田を見送る状態になった竜也達も施設を後にした。
竜也達と夢田に妙な因縁が紡がれた事を、まだ当人達は気づいていなかった。
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