第8話 白き虎と黒き竜

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第8話 白き虎と黒き竜

「すまなかった、お前の道を潰した事は今も後悔している」 「いや、俺もまさかチャクラ封じられてたとか知らなかったから」 竜也は久しぶりに訪れた祖父の家の仏間で祖父に謝られていた。 停学で時間があったから、祖父に気になる事を尋ねに来てみたらこうなった。 聞かなければよかったかな? とも思い浮かんだ竜也だった。 竜也は小学生の頃ジークリンデと別れる前までは、自分も祖父の道場で稽古をしていて気が見えていた事を思い出した。 「まあ、竜騎士になっても稽古は受けに行くから又よろしくお願いします」 祖父に対して座礼をする竜也。 「わかった、これからのお前の道を支えさえてくれ」 「うん、ありがとうございます先生」 竜也は祖父の道行(みちゆき)と一応和解した。 竜也が祖父と共に道場へ行くと、一人の白い道着姿の眼鏡を掛けた少年が正座をしていた。 他の門弟達はいなかった、どことなく竜也と似た顔付きの眼鏡の少年は竜也達を見て微笑んだ。 「久しぶり、竜也♪」 「久しぶり、学」 眼鏡の少年の名は岸野学(きしの・がく)、竜也の従兄弟で別の学校のヒーロー科で学んでいる。 「竜也も変身できるようになって本当に良かったぜ、俺らの夢が叶ったんだ」 学と竜也、幼い頃は一緒にヒーローになろうと誓った間柄であった。 「ああ、二人で一緒に気功戦士になるって形じゃなくなったけど」 「ヒーローはガワじゃない、行いだって♪ お互い頑張ろうぜ♪」 学が微笑む、祖父の道行はいつの間にか用意したハンディカメラでその様子を泣きながら撮影していた。 「お前達がまた二人揃って、道場に立つ日が来ようとは!」 「いや、俺が受験やら何やらで稽古に来れてなかっただけだからね?」 竜也が祖父にツッコむ。 「竜也、祖父ちゃんは置いといて同時変身とかしてみようぜ♪」 「そうだね、やろうか♪」 「待った、きちんとしたカメラとか編集機材も用意するからコラボ動画撮影に!」 「いや、コラボ動画って何があったのさ!」 竜也が祖父に再びツッコむ。 「ああ、俺が岸野流古武術道場(きしのりゅうこぶじゅつどうじょう)所属のヒーローなんで宣伝動画の配信とかしてるんだ」 「ああ、学はここに所属してるのか」 ヒーローは個人活動だけでなく、企業や警察などの組織に所属していたりする。 竜也と学が話す中、道行は携帯で連絡を取っていた。 「ああ、クラウス君か? 孫達のコラボ動画を撮影するから許可を宜しく」 「……ぶっ! せ、先生? 色々と突然過ぎなんですが?」 「岸野流と国際竜騎士連盟の協力関係をPRするのは、お互い大事な事だろう♪」 その後、電話の向こうでクラウスが叫んでいたが道行は無視して電話を切った。 「さて、竜也の所属にも筋は通した♪ 孫二人の晴れ姿を撮影するぞ!」 道行は孫馬鹿に加え商売っ気が強いお祖父ちゃんであった。 「竜結!」 「憑纏(ひょうてん)っ!」  竜也がフリーデンに変身すると同時に、学も何処からともなく現れた兜と胴鎧と大袖が虎の頭を模した白い甲冑を己の体へと装着する。  白と黒、竜の騎士と虎の武者が並び立った。  「岸野流正統、白陽(びゃくよう)っ!」  「岸野流門弟、暗黒の竜騎士フリーデン!」  二人同時に名乗りを上げ、半身になり背中と突き出した拳を合わせて構えた。  これで場所が採石場で背後に爆発があれば決まりだ。  「良し、二人共そのまま演武に入ってくれ!」  白陽とフリーデン、二人の従兄弟ヒーローが揃い踏みした所で道行からの指導が入る。  「行くぜフリーデン、肩当身ノ型・岩融(かたあてみのかた・いわとおし)っ!」  「応っ!」  間合いを取った二人が、互いに相手に背を向けて肩からぶつかり合う。  「肘当身ノ型・雨垂(ひじあてみのかた・あまだれ)っ!」  フリーデンと白陽が互いに跳躍し相手の額を狙い肘を打ち下ろすっ!  打ち合いから互いにくるっと空中で好転し着地を決める。  「良し、カットだ♪ 良い画が撮れたぞ、編集したらアップするからな」  「祖父ちゃん、本業は武術家だよな?」  「その辺ツッコむなよ竜也、家も色々あるんだ」  「何処も同じか、その辺は」  後日、二人がぶつかり合ったコラボ動画はバズったと言う。  撮影が終われば、竜也にとっては久しぶりの稽古だった。  学と一緒に柔軟をしたら互いに攻防を入れ替えての型稽古。  動画には使わなかった蹴り技の稽古からだ。  相手の膝や脛を踵で叩く薪割(まきわり)、膝裏を狙って踵で蹴る(きこり)な地味な蹴りから爪先で顎を蹴り上げつつとんぼ返りをする水車(すいしゃ)と派手な物までを行う。  手技も格闘ゲームで見るような、相手の内臓に衝撃を伝える中段パンチの鐘撞(かねつき)や拳槌で鼻や後頭部を叩く杵衝(きねつき)と傍から見れば格ゲーの同キャラ対戦の様な稽古であった。  「気もちゃんと使えるようになったな、竜也」  「ああ、今は魔力も使える」  気でバリヤーを張りながら稽古する二人、打撃の次は投げ技だ。  「行くぜ、簀巻(すまき)っ!」  相手の腕に自分の腕を巻き付け足を絡めて回転しながら倒す、竜也達の先祖が相撲やレスリングなどからパクって編み出したらしい。  「家の流派、他所の技のパクリが多いよな」  稽古を終えて竜也と学が縁側で語る。  「江戸時代に長崎で、中国人やオランダ人からパクったって伝書に書いてあった」  「学は伝書読ませてもらったんだ、良いな」  「お前、初伝取った後からサボってたから次に中伝取ってからな」  「わかった、真面目に稽古受けに行くわ」  「おう、そうすりゃ月謝が家に入る♪」  「汚い、次期伝承者汚い!」  「武術も生きるのに金がかかるんだよ♪」  従兄弟同士の少年達は笑いあった。    一方、竜也大好きなジークリンデは感覚共有を応用し瞳を閉じで丼飯を五杯ほど平らげながら竜也の行動を見ていた。  「ヤバイ、たっちゃんの稽古してる姿が素敵すぎて食が進む♪」  恋人の姿をオカズに飯が食える、ジークリンデは平常運転だった。  竜也の方は、気にせずに男同士で過ごしていた。  「お前、停学は響くから気を付けろよ?」  「わかってるよ、学も王道館(おうどうかん)から家に来ればいいのに?」  「そうしたいけどさ、推薦で入って学費半額で良い環境なんだ」  「ああ、それは抜けられない奴だ」  学の通う王道館は、私立で良い所の坊ちゃん嬢ちゃんが通うエリート校。  王道館のヒーロー科のみが、普通科のボンボンやお嬢様と違い一般家庭の子も入れる叩き上げコース。  竜也が通う椿原にとっては部活などのライバル校の一つである。  「推薦って言っても祖父ちゃんがOBで、柔道部の指導してたから半分コネだよ」  「そういや家の鉄鋼寺さんも、お祖父さんが王道館の空手部OBか」  「そうだ、マルタはそっちで苛められてないか?」  マルタの事を竜也に聞く学。  「鋼鉄の風紀委員で、馬鹿をバシバシ粛清してるよ」  素直に答える竜也。  「マジ? あいつ、真面目過ぎでそこが良い所だけど報復されないか心配だ!」  マルタを心配する学。  「そう思うなら、心を馬鹿にして素直に行動しなよ」  「わかった、俺より馬鹿な竜也にも彼女が出来たんだから俺も頑張る」  「おまいうだけど頑張れ」  このやりとりがきかっけで、学とマルタが結ばれたのは後のお話。  竜也が帰宅すると、ジークリンデが居間に来ていた。  「お帰り~♪」  「ただいま、何か機嫌が良いね?」  「う~ん、ちょっとね♪」  竜也は深くツッコまない事にした。  夕食後、自室で寛いでいた竜也は波止場の倉庫で白衣の集団と黒いスーツの男達が スーツケースを取引する映像を見た。  それと同時に窓から矢文が飛んで来た!  「波止場で事件の感あり、強力を願うってメールで寄越せ!」  掴んで読んだ矢文を捨てて窓から飛び降りる竜也。  「たっちゃん、行くよ!」  ジークリンデにキャッチされ、彼女の背の上で変身し現場へと向かう。  フリーデンが現場上空に付くと、倉庫の屋根の上には白き鎧武者こと白陽がいた。  「来たかフリーデン」  「人の家に矢文は止めろ!」  「些事だ、気にせず乗り込もう!」  「こいつ、変身すると性格変わるな」  「じゃ、たっちゃん頑張って♪」  ジークリンデに空で待機してもらい、白陽とフリーデンが同時に屋根を踏み抜いて倉庫内へ侵入する。  「な、何者だ!」  「何処でこの取引を知った!」  白衣の集団が瞬時に爬虫類の怪人に変身する。  黒スーツの手段も、黒いパワードスーツを身に纏う。    「岸野流正統、白陽(びゃくよう)っ!」  「暗黒の竜騎士フリーデン!」  屋根をぶち抜いて降りて来たヒーロー二人が名乗りを上げる。  「ヒーローか、死ねっ!」  「ヒーローに見られようとも、殺してしまえば問題ない!」  敵の方も仲良くフリーデン達を襲って来る。  「太刀を抜け、フリーデン!」  「わかってるよ、偉そうに!」  フリーデンがファングシュベルトを構えると、白陽も青白く光る太刀を構える。  「「合わせ太刀・三日月っ!」」  フリーデンと白陽が同時に叫び光と闇の斬撃を放ち、襲って来た怪人達を吹き飛ばす。  「殺すなよ従兄弟殿? 賞金が減るのは御免被る!」  「わかってるが、その時代劇口調は止めろ!」  フリーデンは、変身すると時代劇の侍のような態度特徴になる白陽を面倒くさいと思いながら協力して怪人達を当身を使った格闘で制圧して行く。  「さて、これにて一件落着だな」  「ああ、連中のケースも回収した」  叩きのめして拘束した怪人達を見つつ語るフリーデンと白陽。  「でかした、一応写真撮っておこう」  白陽が手首からスマホを出して素早く敵のスーツケースを撮影する。  「二人共、警察呼んだよ~♪」  そう言って空から舞い降りたジークリンデが合流すると、サイレンを鳴らしながら パトカーと護送車がやって来る。  フリーデンとジークリンデは白陽と共に怪人達を警察へと引き渡した。  「ふ~、取り敢えずお疲れ」  変身を解いて疲れる竜也。  「ああ、二人共来てくれて助かった」  変身を解いた学が普通に話しかける。  「まあ今回はな、ところで敵のスーツケースの写真見せて」  「ああ、これだな」  学のスマホに映っていたのは、DESIRESEEDと言う単語が刻まれていた。  「デザイアシード、ヤバそうなブツだな」  「いかにも、人間を怪物に変えます見たいな奴ね」  「ああ、今回の件でこれの製造者が俺達を敵と見るだろうな」  「まあ、その時は協力して戦おう」  こうして、謎のアイテムDESIRESEEDの事件にフリーデン達は関わる事になって行くのであった。
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