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大人ぶって笑ってみる。
高校生である僕らの前には中途半端に希望が漂い、それを掬い上げられると信じている。
俺の明日はもっと輝いてるんだ。
私は今日という日をすぐに思い出に変えていける。
そんなふうに、格好つけたいんだと思う。
本当はもっと、子どものように別れを惜しみたい。
「もう少し歳を重ねれば過ぎ去っていく時間の尊さがわかるから、素直に惜しみ、嘆くことができるかもね」
そう言って、彼女は笑った。まだ一緒に教室で過ごせた、いつかの記憶だ。
僕には、そんな余裕はない。もう同じ校舎で過ごせなくなることが、堪らなく寂しく、恐ろしく、辛かった。
東京の卒業式の日取りでは、まだ桜の季節としては早い。桜の木の下で卒業証書を持つことは、もう少し温暖化が進んだあとの世代に任せればいい。
冬のロスタイムのような日和で執り行われた、卒業式。
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