カリオン公爵

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カリオン公爵

コンコン 「旦那様がお見えになりました。」 クラリス様が頷くと、部屋の中にいたメイドがドアを開けた。 「お父様、お仕事ではなかったのですか?」 私達が挨拶する間もなく、アイリス様が公爵に問いかけた。 「早く終わったから、私も茶会に混ぜてもらおうと思ってね。」 そう言って、公爵はクラリス様の横に座った。 「侯爵、まずお礼を言わせてくれ。君のお陰で、この国の不安要素は1つ消えたよ。マディソンが集めていた武器は全部見つかったし、関わった人間もかなり解ってきたからね。」 「私はこの国の民ですから、当然の事をしたまでです。」 ……公爵が来るなんて、想定外だわ。 王弟である公爵を味方にするのが難しいと思ったから、先に夫人から落とそうと思ったのに、計画が台無しよ。 ボロボロの花で好感触を得ていたし、その流れで話そうと思っていたのに…。 クラリス様が二人掛けのソファーに座っているから違和感があったけど、公爵が来る予定だったのなら納得だわ。途中で退席する事はないと思う。 こうなったら、公爵本人にお願いするしかない。 「あの…」 「言いたい事は大体わかるよ。シリウスの子供の事だろう?」 まさか、話す前に言い当てられるなんて…。先に話を持ち出すのは『この話はするな』っていう事かもしれない。 戸惑う私に代わって、トーマが話を続けてくれた。 「その通りです。説明の手間が省けて助かります。」 「初代ラッセン侯爵を殺害した犯人は国王を狙っていた。侯爵がその犯人の家族の事を調べていると聞いたからね。それくらい予想はつくよ。」 「犯人の親族は皆処刑された…と、色々調べましたが、その結果はどれも変わりませんでした。」 「抜け穴はなかった。」 「はい。ですから、手を貸して頂きたいのです。」 「私が手を貸した位で事態は変わらないし、国民は許さないだろう。」 自分達が納めた税で、殺し合いの準備をしていたなんて許せないよね。その税を納めずにすんでいれば…って、そう思われて憎まれても仕方がない。 それでも… 「1才にも満たない子が、父や祖父の罪を共に背負う必要はあるのでしょうか?」 法で決められているとしても、それを考え直す時は必ず必要になる。時代は進んでいくんだから、少しずつでも変えていかないと。 これは特別な事でも何でもない。
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