2636人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
カリオン公爵
コンコン
「旦那様がお見えになりました。」
クラリス様が頷くと、部屋の中にいたメイドがドアを開けた。
「お父様、お仕事ではなかったのですか?」
私達が挨拶する間もなく、アイリス様が公爵に問いかけた。
「早く終わったから、私も茶会に混ぜてもらおうと思ってね。」
そう言って、公爵はクラリス様の横に座った。
「侯爵、まずお礼を言わせてくれ。君のお陰で、この国の不安要素は1つ消えたよ。マディソンが集めていた武器は全部見つかったし、関わった人間もかなり解ってきたからね。」
「私はこの国の民ですから、当然の事をしたまでです。」
……公爵が来るなんて、想定外だわ。
王弟である公爵を味方にするのが難しいと思ったから、先に夫人から落とそうと思ったのに、計画が台無しよ。
ボロボロの花で好感触を得ていたし、その流れで話そうと思っていたのに…。
クラリス様が二人掛けのソファーに座っているから違和感があったけど、公爵が来る予定だったのなら納得だわ。途中で退席する事はないと思う。
こうなったら、公爵本人にお願いするしかない。
「あの…」
「言いたい事は大体わかるよ。シリウスの子供の事だろう?」
まさか、話す前に言い当てられるなんて…。先に話を持ち出すのは『この話はするな』っていう事かもしれない。
戸惑う私に代わって、トーマが話を続けてくれた。
「その通りです。説明の手間が省けて助かります。」
「初代ラッセン侯爵を殺害した犯人は国王を狙っていた。侯爵がその犯人の家族の事を調べていると聞いたからね。それくらい予想はつくよ。」
「犯人の親族は皆処刑された…と、色々調べましたが、その結果はどれも変わりませんでした。」
「抜け穴はなかった。」
「はい。ですから、手を貸して頂きたいのです。」
「私が手を貸した位で事態は変わらないし、国民は許さないだろう。」
自分達が納めた税で、殺し合いの準備をしていたなんて許せないよね。その税を納めずにすんでいれば…って、そう思われて憎まれても仕方がない。
それでも…
「1才にも満たない子が、父や祖父の罪を共に背負う必要はあるのでしょうか?」
法で決められているとしても、それを考え直す時は必ず必要になる。時代は進んでいくんだから、少しずつでも変えていかないと。
これは特別な事でも何でもない。
最初のコメントを投稿しよう!