カリオン公爵

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「法は人が作ったものです。その時代の権力者にとって都合の良いように。なかなか変えられないのは、自分達に害がなければ考え直さないからです。…法を変えられる人はごくわずかしかいません。その『ごくわずか』に私達は含まれます。だから、変えたい。そう思うのは、傲慢でしょうか?」 我が儘だと言われるのは覚悟してるわ。トーマが止めなければ、タヌキジジィは国民を平気で犠牲にしていたはずだから。 「では、聞こう。具体的にどうするか決まっているかい?希望や願望だけ述べたって、現実は変えられない。」 「勿論その方法も考えていますし、書類も作成しています。」 私が答えに詰まる前に、トーマが質問に答えてくれた。 「侯爵、おそらく君達夫婦の意見に耳を貸す者は殆んどいない。そうは思わないか。」 「仰る通りです。だからと言って、おかしいと思う事を口に出来ないなら、議会など有って無いような物になります。」 「頭の硬い奴らをどうやって従わせるつもりだ?」 「従わせるのは簡単ですよ。私が何の考えもなく、言われるがままにマディソン家の事後処理していたとお思いですか?」 「何か思惑でも?」 「殆んど私が処理してきました。それを突然放棄されたら、後は誰が引き継ぎますか?私が仕事を割り振りしていましたので、他の者は自分の担当以外は何一つ解らないでしょう。そうしないと、公爵家の情報が表沙汰になる可能性があると考えての事でもありますが、仕事を誰か1人に任せすぎる危険性を理解して貰う為でもありました。全てを掌握してるのは私なんです。」 「……」 「私より権力を持つ人物を相手にするのに、権力をぶつけたって勝てません。知識と労働力、それが今の私の武器です。」 「話し合うと言っておいて、強引に取引に持っていく…か。そういう所は、侯爵は母親に似たのだろうね。」 トーマはキョトンとしているけど、私は公爵が何を言いたいのか何となく解った。 「トーマ、学生の時のお話だけど、お義母様は王妃殿下に無実の罪を着せた教師をクビに追いやったのよ。方法までは教えてくれなかったけどね…」 きっと、脅しに近い『取引』だったと予想はつくわ。今のトーマのようにね。
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