第六話「エンカウンター」

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第六話「エンカウンター」

「不死眼さん、あの人達と知り合いなんですか?」 「知り合いというか……彼らは敵だよ。彼らは魔族__負の感情から生まれる影の化け物を利用して、世界を支配しようとする組織だ」  不死眼がそう言うと、飛んで魔族の方に近づく乙愛 「! 乙愛君!」  不死眼が止めるが、乙愛はそのまま魔族の近くに向かう。 「……」 「っ……!」  乙愛は四人のうちの一人の、褐色肌の堕天使の様な見た目の少年と目が合い、身体をビクッとさせる  が、近くに来ると、乙愛は四人衆に 「影の化け物を解放して、あなた達の目的は一体……!?」  と、聞いた。  四人衆は、少し間を置いて口を開く 「目的? そんな事教えてどうするの?」 「お前も既に見てるだろ? 影の化け物を増やし、自由に暴れさせる」  褐色肌の堕天使の様な見た目の少年 ルシファルと、二本角に黒の和服を着た、鬼のような姿をした男性 オーガは当たり前のように答える。 「そして、人間を滅ぼし__我らの世界を作る」 「魔王様の望みのままに……理想のままに」  海賊帽子をかぶって、革コートを着た男性 コルサーンと、青髪で耳の部分がヒレの、ライトグリーンの襟の立った派手な衣装の男性 オケアニスは乙愛に教えた 「人間を滅ぼして、自分達の世界を……?」  乙愛は震えた声で言う。 _______________________  するとルシファルは、思い出したように乙愛に話す。 「あ、そういえば……、無事だったんだね」  その言葉を聞いて、乙愛は聞き返しそうになるが、ハッと思い出した。  の、化学の先生が影の化け物にされていたことを__  乙愛は恐る恐るルシファルに聞く 「どうしてそれを__っ!? もしかして、前のはあなたが!?」 「勿論、俺がやったよ。生徒の為に頑張る先生が、影の化け物になったらどうなるのか……気になったからさ」  平然と言うルシファルに対し、乙愛は聞き返す。 「気になった……それだけで、人を影の化け物にしたの!?」  乙愛に言われるが、ルシファルは 「そうだけど、  __」  と、顔色一つ変えずに答える  しかしその言葉を聞いた乙愛は拳を握り、怒鳴るような声で、ルシファルの言葉を遮って叫ぶ。 「よくない!! 良いわけないよ!」 「あなた達はそれで良いかもしれない。でも、影の化け物にされた人や、自分の負の感情を利用された人は苦しんでる!」 「私は……苦しんでる人がいるのに、自分さえ良ければいいなんて考えは嫌!」  不死眼は乙愛の言葉を聞いて、少し安心したように微笑む  一方ルシファルは無表情のままだったが、乙愛の言葉に対し、小さく舌打ちをした。 「止めとけルシファル。人間と会話はするなってボスから言われてるだろ? それに、俺達に与えられた任務を忘れたか? 様子見……だろ?」  オケアニスに止められ、悔しそうにするルシファル  するとコルサーンは、日向と美咲がいない事に気づく。 (あれ? 鬼の戦少女と海賊の戦少女がいない……一体何処に?)  コルサーンが周りをキョロキョロすると、四人の死角から日向と美咲は不意打ちをしかける 「テゾーロスラッシュ!」 「震霆飛電(しんていひでん)っ……!」  そう言うと日向は、サーベルから複数の斬撃を飛ばす技 「テゾーロスラッシュ」  を、コルサーンとオケアニスに繰り出す  対して美咲は、数多くの雷を相手に落とす技 「震霆飛電」  を、ルシファルとオーガに繰り出した  が、四人にぎりぎりでかわされてしまう。 「おっと、危ない危ない……気が早い奴だな。でもそんなのは当たらないぜ〜?」  自身を煽るコルサーンに、日向は思わず腹を立てそうになるも、怒りの感情を抑える  美咲の方は、技を見たオーガが口を開いた。 _______________________ 「その技……の酒呑童子かぁ?」 『っ……!』  その言葉に、美咲と酒呑童子は不意をつかれ、少し驚く  乙愛はオーガの言葉を聞いて、動揺を隠し切れない。  え? 酒呑童子さんが、裏切り者……?  魔族の って事?  でも、酒呑童子さんは神聖のはず……  一体どういう事なんだろう……?  乙愛がそう思っている一方、ナビルは心配するように、酒呑童子に聞いた 「酒呑童子様、揺さぶりは__」 「案ずるなナビル。我に揺さぶりは効かぬ……もう戻らぬからな」  酒呑童子が平静に言うと、オーガは怒りを露わにする。 「チッ、あの時と変わんねぇ顔だな!! のくせに不死眼がいる人間側につき、仲間の俺達を毒で苦しめて、ボスの首を斬り落として封じた__あの時と!!」  オーガがそう言い、他の三人も酒呑童子を睨む  憎悪の視線を向けられても、酒呑童子は落ち着いていた。 「……我は変わらぬ。お前になんと言われようと、お前達の考えや、やり方は間違っている……なのに、何故それに気づかない」 「俺達やボスの思想は間違ってねぇよ! それを今からお前にしっかり教えてやろうか……!」  オーガは構えたが、コルサーンが止める。 「待てオーガ、今は影の化け物がいないし、人数的にこっち不利だぜ?」  コルサーンが止めても、オーガの怒りは収まらなかった 「んな訳っ___あるなぁ」  が、戦少女の数を見て冷静になる。  その後ろで、オケアニスとルシファルは小声で話す。 「……確認したし、これ済んだら帰っていい?」 「多分……というか、もう帰っていいと思う」  オケアニスが聞くと、ルシファルは静かに答え、二人は先に帰ろうと消えた  それに気づいたコルサーンも、バレないようににし、消える。 「酒呑童子ぃ! お前の後継者は俺が殺してやる! てめーの目の前でな!」  オーガはかっこつけて言うが、酒呑童子と不死眼は真面目な顔のまま微動だにしない  不死眼はそっと口を開き、オーガに 「オーガ、お前……」  と言った。 「あ? あ……あ"ぁっ!!?」  不死眼に言われ、オーガは背後を二度見する  さっきまでいた仲間がいなくなっている事に、ようやく気づく。 「あいつら……! 不死眼、酒呑童子! 覚えてろよ!!」  オーガは二人にそう言うと、その場から消えた。  しばらくの間その空間に長い沈黙が続き、乙愛は心の中で呟く様に言う (なんか、変な人達だったなぁ……)
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