第六話「エンカウンター」

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 翌日、乙愛はルシファル達魔族の事を考えていた  頭の中にルシファルの 「なんで君が気にするの? 君には関係無いでしょ? 他人がどうなっても__」  という言葉が流れ、心を悩まされる。 (良くない、良くないよ……他人がどうなってもいいなんて、そんな自分勝手な事……)  思い詰めた表情をし、苦悩する乙愛を見たアンジュは、乙愛に声をかけようとしたナビルを止めた  しかし、伊紗奈は乙愛が心配になり小さい声で呼ぶ 「__ちゃん? _愛ちゃん、乙愛ちゃん!」 「うぇっ!? い、伊紗奈ちゃん!?」  伊紗奈に何回か名前を呼ばれ、やっと気づいた乙愛  その様子を見ていつもの乙愛と変わりなく、安心すると同時に、アンジュは口を両手で塞ぎ、小さく笑った。 「んだけど、凄く思い詰めた表情をしていたから、心配しちゃって……」  伊紗奈がそう言うと、乙愛は思わず恥ずかしさで顔が赤くなる  が、乙愛は 「それより伊紗奈ちゃん、声をかけようとしたって言ったけど……どうしたの?」  と、伊紗奈に聞いた。 「ボランティア部の方で、とても重要な話があるって不死眼さんが言っていたから__」 「伊紗奈ちゃんそれ本当? だったら早く行こ!」  伊紗奈が言いかけると、乙愛は伊紗奈の手を握り、教室を飛び出す  いきなり手を握られ、伊紗奈は小さく声を上げる 「きゃっ!? ま、待って乙愛ちゃん! 焦らなくても皆は待ってくれるから!」 _______________________  部室までの長い廊下を、乙愛は伊紗奈の手を繋いで歩いていた  その様子を見て、ヒソヒソ話をする周り……  周りの視線が気になった伊紗奈は、聞きづらそうに乙愛に聞く。 「乙愛ちゃん、急にどうしたの? いきなり手を繋ぐなんて__」 「あ、迷惑とは思ってないよ。ただびっくりしただけで……」  伊紗奈にそう言われ、自分の手元を見る乙愛  そして少し考えてから、驚いて手を離す。 「わわっ!? ごめん伊紗奈ちゃん! 実はこれ私の癖なんだ」  乙愛の言葉を聞いて、伊紗奈は 「癖?」  と聞き返した。 「うん。私ね、よく昔お父さんやお母さんと一緒に出かけた時、離れないように……って手を繋いでもらってたんだ」 「ふふっ、それで私の手を繋いだんだね」  乙愛が言うと、伊紗奈は微笑む  更に乙愛の手の温もりを感じると、穏やかな口調で聞く。 「乙愛ちゃんの手の温かさも、お母さんやお父さんのおかげなのかな?」  乙愛は頬を人差し指で掻きながら、少し恥ずかしそうにしたが、すぐに笑顔になって答える。 「きっとそうだと思う! お母さんもお父さんの手も、どっちも温かいんだよ〜」  まるで自慢するように、嬉しそうに答える乙愛を見て、伊紗奈は笑みを溢す。  乙愛はそのまま、小さい頃の話をしようとした 「懐かしいな〜あの時は__」 (あれ……?)  しかし乙愛の視界に、大勢の人に囲まれた、白髪で緑目の少女が映る  乙愛より年下に見えるその少女は、髪や瞳の色は違えど、美咲に似ていた……  少女に見惚れ、乙愛は話を止めてしまう。 (あの女の子、なんだろう? ここの生徒じゃなさそう。小学生っぽいし……それに、美咲ちゃんに似てる……?)  一方、少女の方も乙愛達に気づくと、乙愛をチロリと見る。 _______________________  しばらくして、ボランティア部の部室前についた二人  乙愛は扉をノックし、伊紗奈と共に中に入る。  日向、美咲、凛香は普通に椅子に座っていたが、不死眼のみ黒板の前に立って、二人を待っていた  不死眼は、乙愛と伊紗奈が来たのを確認すると、口を開く。 「来たね。呼び出してすまない、昨日のを詳しく話しておきたくてね」 「……あの事って、四人衆__じゃなかった、魔族の事ですよね?」  そう言うと、乙愛は言いかけた言葉を直し、不死眼に聞いた  不死眼は真剣な表情で頷いて、近くの椅子に腰かけると話し出す。 「言った通り、彼らは影の化け物を解放し、人間を滅ぼして自分達の世界を創ろうとする、君達戦少女の敵だ」  魔族と聞いて、伊紗奈はそっと呟くように言う。 「魔族って、神話とかフィクションでしか聞いた事ないんですけど、確か人類に敵対する……」 「多くの場合はそうだね。勿論彼らもそうだ」 「私を含む神聖側の人間と彼ら魔族側の人間は、5000それぞれの都合と自由の為に争っていたんだよ」  不死眼は頷いて、話を続ける  それぞれの都合と自由の為に……  人同士の争いを、5000年前から__  え? 5000年前!?  静かに話を聞いていた乙愛と伊紗奈だったが、不死眼がさらっと5000と言った事に驚く 「ふ、不死眼さん……今、5000年前って言いました?」  乙愛は思わず不死眼に聞いた  不死眼は 「え? そうだけど……あ、言ってなかったね」  と、平然とした顔で言う  乙愛と伊紗奈はしばらくしてから 「えぇぇぇ〜!?」と声を上げる。  二人が声を上げたのを見て、日向は笑みを溢す 「そりゃそんな反応になるよね〜のに、先生が長生きしてるって知ったら」 「私達も最初は驚いたわ。先生が5000年、いやそれ以上生きてるって知った時は」  凛香も口を開いたが、無言のままの美咲の様子を見て、呆れるように美咲に言う。 「はぁ……美咲、あなたも何か言いなさいよ」  そう言われ美咲は 「……何か?」と、落ち着いた声で言った  凛香は少しよろけてから、強い口調でツッコミを入れる。 「何か? じゃないわよ。そうじゃなくて、いくらなんでも反応しなさすぎよ」 「……反応しろと言われても、特に言う事が無いんだけど」  少し考えたような素振りの後、無表情で答える美咲  しかし凛香は、美咲の態度に腹を立てる。 「っ……あ、あなたねぇ……!」  危うく喧嘩を起こしそうになる二人  それに気づいた不死眼は、凛香をまあまあと止める。
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