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「そんなに見られると照れるな…。けど、こうやって一緒にいるのも、今日が最後だと思うと淋しいね。でも、リーゼロッテが幸せなら、私達は応援するよ」
「お父様、ありがとうございます。そして、お世話になりました」
「式の前から泣かせるのはよしておくれ。またベルーナに叱られてしまうからな…」
ステラは小さく会釈をすると、式場の横にある小さな扉から中に入って行った。
どうやら参列者の席にすぐに行けるように造られた扉のようである。
大きな木製の扉は父と娘が開くのが、ジブリールの昔からの慣習なので、リーゼロッテはセルゲイ侯爵と一緒に扉を開く。
祭壇まで敷かれた、赤いが豪奢な模様の入った絨毯をゆっくり歩く。
緊張しすぎてよく分からなくなりそうだったが、腕を組んでいるセルゲイ侯爵も緊張しているようだ。
(本当に結婚するんだわ私。自分で本当に好きな人と一緒になれるのが、とても嬉しくて幸せだなんて知らなかった…)
祭壇の前で待つラシードも今日はジブリールの正礼服を着ていて、前にミゲル王子の部屋であった時とは違う雰囲気だ。
柔らかな笑みを浮かべて、こちらに手を差し伸べるラシードに、リーゼロッテの胸は更に高鳴る。
式でなければ、ラシードに駆け寄っていただろうが、式なのでグッと我慢した。
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