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セルゲイ侯爵の手からラシードの手に交代したリーゼロッテは、幸せそうにラシードに微笑みかける。
ラシードも嬉しそうに微笑み、ベールを取り去るようにして上げると、そのまま唇を重ねた。
「!!」
リーゼロッテは驚いて硬直してしまう。
式の流れでキスはあるが、最後の方で、軽く触れ合うだけの形式的なものだったはずなので、リーゼロッテもそのつもりで、心構えをしていた。
驚いたのは、リーゼロッテだけではない。
セルゲイ侯爵とベルーナ夫人、ステラ、ラシードの継母にあたる太后、キーシャとラファイエット夫妻も…いや、その場にいたラシードを除く全員が驚いた。
唇をゆっくりと離したラシードの唇には、リーゼロッテの口紅が付いてしまったが、イタズラっぽく笑うだけで、一度も拭う素振りを見せなかった。
リーゼロッテは恥ずかしさで式進行も頭からすっぽ抜けてしまい、取りあえず頷いたり、相槌を打ったり、返事をするだけで、式は終わっていた。
終わったことと、窮屈なドレスというか婚礼衣装を脱いだことで、やっと一息つけたリーゼロッテの入浴やメイク落としをステラがやってくれた。
「それにしても、ラシード様は大胆な方なんですねぇ、びっくりしました」
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