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父親が言うから、取りあえず許嫁になった。
別に王妃様になりたいと思ったこともない。
そもそも王族の堅苦しい式典などに好んで出たいと思ったこともないし、舞踏会でごちそうも食べられないのに、何が楽しいのか分からない。
それでも、許嫁として恥ずかしくないように、お茶や食事のマナー、ピアノにダンスのレッスン、お礼状の書き方の練習、刺繍や裁縫、ある程度の料理、収支の計算と帳簿の付け方と、生活に関することから習い事まで一通りやってきた。
収支の計算と帳簿の付け方は、母親の実家が元々は小さな食料品店を営んでいたことから、金銭感覚を身に付けさせる為だった。
ここまでやっている自分を褒めてあげたいくらいだとリーゼロッテは思う。
最近は化粧とドレスの着付けもほとんどできるが、さすがにコルセットだけは人の手を借りなければならない。
一人で締め上げられるような構造ではないからだ。
ただドレスも重たいものが増えてきて、靴も頼りない細い細いハイヒールで、転ばないようにするので頭がいっぱいになる。
笑顔を貼り付けている余裕もなかった。
しかし他の淑女は同じ格好なのに余裕がある。
リーゼロッテはそれが不思議でならない。
背中に針金でも通しているのかと思う。
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