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そう思っても何も変わらないので、リーゼロッテは黙って無理に微笑んでいた。
笑顔を作るのは貴族なら誰でも得意だ。
そこまで頑張るリーゼロッテの姿を見て、家族はもとより周囲の誰もが、許嫁であるアルフレッド王子の為に頑張っているのだと思っていた。
王子に想いを寄せる少女達も、リーゼロッテの頑張りを知って、応援する側に回り、自ら身を引いていた。
リーゼロッテ自身は王子の為と思ったことは一度もない。
将来の自分の為になると思って、淡々と全てをこなしていた。
欲を言えば、馬術や剣術の稽古もやってみたかったが、そこまでは手が回らず諦めるしかなかった。
機会があればやってみたいが、果たして許嫁か夫になった王子が許してくれるだろうか?
自分がやってみたいことを考えると、結婚が煩わしく思えてならない。
せめて自分の自由時間を多分にくれる夫でなければ、夫婦生活は一年と経たずに破綻しそうだ。
リーゼロッテは小さく息をつくと、部屋にある姿見で、自分の姿をまじまじと見つめる。
(何だか人形みたいな姿。私は観賞用の人形じゃなかったはずよ…)
自分の気持ちがよく分からなくなったリーゼロッテは、拳を振り上げて姿見を叩き割ろうとしたが、ガラスの割れる音で騒ぎになるといけないと思い、静かに拳を解いて下ろした。
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