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次は音が立たない方法として、髪を短く切ろうかと思ったが、床に髪が散らばったままだと騒ぎになるどころか、髪が短いことで騒ぎになりそうだし、何より自分がショックを受けそうなので、妄想だけに留めておいた。
「そう言えば、明後日は卒業式と卒業パーティーがあるのよね?アルフレッド様にエスコートしていただく約束はしているの?」
「卒業式の話が出た時に一応話してはあるのですけど、覚えていらっしゃればエスコートしてもらえるかと」
「しかし普通は男性から確認を取るだろうに。女性のリーゼロッテから確認させるのは、王子と言えど少々問題があると思うのだがね」
父であるセルゲイ・シグマ・ヴァンドール侯爵が口元をナプキンで拭いながら、訝しげな表情になる。
大事な娘の未来の夫に既に点数を付けているようだ。
「今は女性からもお誘いしますので大丈夫です。私も自分から確認しないと納得できない性格ですから」
そう答えたものの、リーゼロッテはアルフレッド王子とほとんど学内で逢う機会がなかった。
学科のスケジュールで会えないのではなく、王子が意識してリーゼロッテを避けていたのだ。
自分が避けられる理由は一つだけだとリーゼロッテは思う。
最近、この国にやってきた聖女アンジェが、王子に常日頃ベッタリとくっついているからだろう。
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