婚約破棄

7/15
前へ
/341ページ
次へ
リーゼロッテに声をかけたのは、リーゼロッテの叔父のバスティアン・クロイツ・ヴァンドール伯爵である。 父であるセルゲイ侯爵のすぐ下の弟で、色気のある容姿にレディファーストを徹底し、ちょっとしたジョークもあって、彼と結婚したいと望む者も多かったが、独身のワンナイトラブを楽しみたいと、縁談や告白は全て断っており、枕を濡らす女性は星の数。 もちろん仕事は真面目にこなしていて、人脈も豊富なことから、国王からの覚えもいいという人物だった。 リーゼロッテは彼から、実の娘のように可愛がられていて、幼い頃は「叔父様と結婚するの!」と言って回るくらい懐いていた。 「叔父様はどうして学校に?教職に就かれていましたっけ?」 「ははは、私が教師になったら、勉強よりも恋愛に比重が置かれてしまうね。私が教師でも勉強に身が入るのはリーゼだけだろうね。今日は明日の卒業パーティーの打ち合わせできたんだよ」 「叔父様もパーティーに参加されるのですか?」 「まぁ、顔が広いし、貴族だからね。パーティーで人脈を更に広げようとも思っていたしね」 「嬉しい!パーティーでは是非私と踊ってくださいませね」 「はは、そんなに可愛いおねだりをされたら、聞かないワケにはいかないね」
/341ページ

最初のコメントを投稿しよう!

659人が本棚に入れています
本棚に追加