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え、ちょっと待って。
小説の……モデル?
「え、それって、俺、どの立ち位置なの? 主役? ……なわけないな。っていうか、璃人ってどんな話を書いてるの?」
「主役だよ? アクが強いわき役たちに翻弄され、やたらと災難が降りかかる主人公の話」
「あは……ははは……」
アクが強いって……璃人のこと?
「マジか……。ちょっと嬉しいな。え? それって今読める?」
強張っていた璃人の表情に安堵の色が見えた。嬉しいと言ったことに、ホッとしたのだろう。
読めるかと尋ねると、後ろにあるパソコンをチラッと見て、頷いた。
「一応、データはあるけど」
「そうなんだ。後で読ませてよ。で、さっきのなんてたっけ……彼……」
璃人の元彼。
「釜やん?」
「そうそう。そいつがファンが家に来るのを心配するくらい評判がいいの?」
「褒めてもらえたよ。釜やんの上司にも、批評してきたやつにも。清ちゃんのおかげ。釜やんなんて清ちゃんのファンなんだって、書いてる俺じゃなくって」
「ええええええええええ? ど、どういうこと?」
俺がモデルの小説が褒められるのは嬉しいけど、俺のファンはおかしいよね? 俺が書いてるわけじゃないのに!
「清ちゃんは主人公のオリジナル版だから。いつも会ってみたい! ってうるさかったんだよ。だから、さっきはすごく嬉しかったんじゃないかな。念願叶って」
お会いできて光栄です。って……そういう意味?
てっきり元彼としてのイヤミか何かなのかと思った。
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