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部屋自体はいつもの黒絵さんの部屋。だけど、ローテーブルの上がまったく黒絵さんらしくなくて、あんぐりしたまま固まってしまう。
突っ立っていると、トンと背中に何かが当たった。
振り返ると、四角い白い箱。その向こうにきょろりとした上目遣いで俺を見ている黒絵さんがいた。
何が起こっているのか分からなくて動揺していると、黒絵さんが照れくさそうに微笑んで目を伏せた。
「ごめんなさい。音は……しません」
「へ? え……?」
「これ、どうぞ」
箱を持ち上げ、俺をじっと見る。
「……ど、どうも……」
わけがわからない。ますます動揺しながらその箱を両手で受け取る。
これがクリスマスなら、中身はケーキと相場が決まっているけど……。
黒絵さんはニコッとはにかむように微笑むと、クローゼットを開けてコートを脱ぎ、ハンガーへかけた。
「良かったら、食べてって下さい」
食べる……? やはり中身はケーキとか? そういう類の物なのだろうか……。もしかして、黒絵さんの手作りとか……?
チラッと黒絵さんを見れば、V字のセーターにシャツを合わせてオシャレでちゃんとした服装。いつものてろんてろんに首の伸びたTシャツとハーフパンツ姿とは大違いだ。
「……これ、開けて、いい?」
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