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Aアパートは最寄り駅から徒歩五分。一棟につき八部屋の合計、四棟が南向きに並んでいる。手前味噌だが、かなり好立地条件のアパートだ。
メンテナンスとリフォーム、耐震工事を施し、アパートの築年数は五十年になるが人気は衰えていない。
アパート裏(北側)には一部屋二台分の駐車スペースもあるし、南側前面には手入れされた庭もある。ここら一帯の新しく建てられたアパートは周りをアスファルトで固めてしまった為に、夏は照り返しが厳しく、夜になってもアスファルトの蓄熱で大変暑いらしいがうちのアパートは違う。庭には木陰を作る木もあるし、春には花も咲く。
……まぁ、俺が経営してたわけじゃないから威張れないけど、なにしろ人気のアパートなのだ。
そしてこのアパートの管理を任されてすぐに、一階の五号室が空き部屋になった。理由は転勤だ。独身男性だった為、俺は次に入る店子(借家人)も独身男性がいいなと漠然と思っていた。
このAアパートの一号館は店子が全員男性だったのも大きな理由の一つだ。
隣の市にあるBアパートはファミリー向けの作りで、そちらの方が管理が大変だと母にも聞いていた。俺の偏見も入っているかもしれないが、やはり女性や子供は厄介だ。女性はその性質から細かいところまで目が行き届く。子供は……言わなくても察して貰えると思うが、汚したり、壊したり、大声を出すのが仕事だ。
子供は嫌いではないが、管理となると話は別。AとB、どちらが大変か考えなくても分かるだろう。
話が逸れたが、そんなこんなで、新しく店子希望の独身男性が居ると連絡がきた時、俺はラッキーと思った。
面談してこの人なら、問題ないだろう! と俺自身も思ったのだ。
それがさっき電話をしてきた人物……黒絵さんだった。
一見、物静かそうで、身なりも地味。言葉の印象では常識があるように見えた。
ああ、あの時は「問題なし」と思ったのに。
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