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夕陽の前で大きな声を出すこともできず、口をパクパクしていたら璃人がしれっと言った。
「グッサリ刺さっちゃって。超合金ロボ抜いたら、お隣さん見えちゃうかもって思ったら……ねぇ?」
お伺いを立てるかのように同意を求めてくる。
「いや、壁一枚で隔ててるわけじゃないから……って、そういうことじゃなくて」
夕陽には「怒ってないよ」という笑顔を作り、壁から突き出ている足を観察する。うちは安普請じゃないから、よっぽど勢いよく突き立てないとあんな風に刺さらない。
「なにをどうしたらこうなったの?」
困惑して璃人に説明を求めた。
「超合金ロボで遊んでたんだけど、転んじゃって。んで、勢い余って吹っ飛んでったら、あんな感じ……に刺さっちゃった」
「はぁ」
どんな勢いだ。さすが男の子は遊びが激しいってことか。
眉を下げている夕陽に気付いて、頭をポンと叩いた。
「コブないか? 怪我してたら大変だ」
「だいじょうぶ」
夕陽はやっと安心したようにくりくりした丸っこい目で俺を見る。怖い人じゃない判定はもらえたらしい。もっと安心を与えてやりたい。
なんてたって、これからは家族になるんだから。
「あれくらいの穴なら直せるから、パパに任せなさい。こう見えてDIYは得意だから」
照れくさいけど、お父さんらしく胸で拳を叩いた。
夕陽がキョトンとした顔で璃人を見る。
あ、初めましてなのに、いきなりパパなんて言われたらビックリだよな。ちょっと先走ってしまった。まずは遊び相手として慣れてもらってから、ゆっくり家族になっていけばいい。そうだよな?
なんて思いながら璃人を見れば、璃人まで目をぱちくりさせている。
「パパって?」
「……あれ?」
お互い顔を見合わせて首をかしげる。
そんな俺たちを小さな夕陽が交互に見ていた。
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