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クッタリしてた黒絵さんがガバッと起き上がって俺の身体を支えに降りてきた。
「……急にきた……」
「ごめん……無理させちゃったね」
黒絵さんは申し訳なさそうにしょぼんと謝罪してきた。まるで、怒られた犬みたい。実際はない耳も尻尾もシュンと下がってる。
黒絵さんの謝罪に俺は「ううん」と首を振って顔を上げた。
「俺、あなたが好きです」
しょんぼり垂れ下がっていた黒絵さんの耳と尻尾がピンと立った。
「うん。俺も好き」
口調はサラッとして、表情だってどことなく余裕のある微笑みを浮かべてる。でも、まっすぐ俺を見る瞳は嬉しそうで、尻尾をプリプリプリプリと千切れるくらいに振ってる柴犬みたいだと思った。
不思議だ。いつもは全然掴めないと思ったのに……今はこんなに真っすぐに黒絵さんの大好きを感じる。
「良かった」
ギュウウッと黒絵さんを抱きしめると、精根尽きた俺は、ガクッと黒絵さんの肩に頭を落とした。
黒絵さんの腕が脇の下を通った途端、グイと簡単に体が持ち上がる。
「ベッド行こう」
「うん」
ああ……女子とはやっぱり違うんだな……と、俺は変なところで黒絵さんを見直した。
黒絵さんにほぼもたれたまま、ベッドへ座りそのまま二人で倒れ込む。手を離したら帰ってしまうだろうかと思ったけど、黒絵さんは「よっ」と布団を引っ張り俺たちにかけた。それにホッとする。
黒絵さんの温もりは片時も離れず、ずっと俺を包んだままだった。
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