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破れた部分を見せないように、客側を向いてしゃがみ込む。
破れた経緯はこう。
私がケーキを入れる箱を取ろうとしたら、隣のケーキ二個分が入る、小さな箱のほうに手が当たって落ちた。地面に落ちた箱を取ろうと腰を屈めたら、ビリリと嫌な音がしたという訳だ。
「持ってきたぞ。着てこい」
店長が慌てた様子でビニール袋に包まれた新しい制服を持ってくる。
「ありがとうございます!」
私はそれを受け取り更衣室へ小走りで向かった。
破れた制服はとりあえずロッカーに入れて、新しい制服の白いブラウスに袖を通す。赤いスカートを履き、赤いチェックのエプロンをつけて急いで売り場に戻る。
3Lサイズの制服の備品をわざわざ店長が用意してくれていたことにも感謝しかなかった。
今みたいなことが起こると想定していたんだろうか?
「お待たせしました」
息を切らして戻ってくると、店長が高木さんの会計を済ませてくれていて、二人でなにやら談笑している。
「あ、戻ってきた。良かったな、備品があって。また来るわ」
高木さんが大きめのケーキ箱を手に持って店から出た。
「ありがとうございました」
店長と二人で高木さんに向けてお辞儀をする。
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