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「おはようございますー」
店に着くなり厨房でケーキを作っている天宮店長に頭を下げる。自前のポロシャツとブラウンのズボンを履いて店に来た。
「おはよう」
「うわぁ、美味しそうなケーキですねぇ」
「味見するか?」
店長は泡立てていたチョコ生クリームをスプーンにひと匙分乗せてきた。
「え、いいんですか?・・・ってだめだめ!私、ダイエットするって決めたので、毎朝の味見も必要なとき以外はやめます」
「出来栄え、みてくれないか?」
「はい、分かりました」
速攻で店長の差し出すスプーンにパクついた。・・・ダイエットを瞬時に忘れたみたいに。
「はあ。店長の作るクリームは超絶品です」
天宮店長のケーキ作りの腕前は天才的だと思っている。
甘すぎないクリーム、舌触りは滑らかで口の中でほわっと溶ける。スポンジはきめ細やかでしっとりふわふわ。
私が働くお店“ドルチェ・ドゥ”が、この街一番人気のケーキ店なのは当たり前だ。
東京進出も夢じゃないってひっそり思っている。
「スポンジも食べてみて」
「はーい」
結局、クリームとイチゴ半切れが乗ったスポンジまで味見してしまった。
元々ぽっちゃり気味だったけれど私がさらに太った原因は、この店で試食をしすぎたことにあると思う。
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