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「お夕飯のお時間をずらせばよいだけです。翔太様はいついかなるときでも、米粒ヒーローマン様として、町と皆様の平和を守ることがつとめなのです。それを、ヒーロー米が切れて技がだせないよ~。などと情けないことになったら、どうなさるおつもりですか?」
米子は詰め寄るように早口で話す。よくも噛まずに言い切れたものだ。
僕はそんな米子のパワーに圧倒されて反応がおくれてしまう。
もはやこの時点で負けが確定したようなものだが、ちょっと粘ってみたい気持ちが芽生える。
「ま、米子。ちょ、ちょっと落ち着いてッ」
圧倒されっぱなしの僕はどうどうどう。という風に、ポケットを人差し指でポンポンと叩く。
「これが落ち着いていられますかー⁉」
ご立腹の米子はポケットの中から、樽の中に詰め込まれた海賊かのように勢いよく飛び出してきた。
「のわっ!」
思わず上半身をのけぞらせて驚く。
「いきなり大声をださないで下さい。驚くではありませんか」
米子はぷりぷりと怒りを募らせる。
「それはこっちのセリフだよ。大体、この町はそんなに治安悪くないと思うよ? そう毎日毎日事件が起きるわけ――⁉」
僕の言葉をかき消すように、「金をよこせー」という言葉が辺りに響き渡る。
「なッ、何事ッ⁉」
恐慌する僕は辺りを見回す。
帰りに寄ろうとしていたコンビニの店内。ナイフを持った中肉中背の男が男性店員を脅している現場が目に映る。
まさかのコンビニ強盗に店内はもちろん、コンビニ前は騒然となっていた。
「ほらみたことですか! ちゃっかりしっかり事件が起こってるじゃないですか!」
米子はドヤ顔で胸をはる。こんな時にドヤ顔はいらない。と突っ込んでいる余裕はない。
「どどど、どうしよう?」
地団太を踏む僕は両手で頭を抱えて米子に助けを求める。
「そんなの決まっているじゃありませんか。米粒ヒーローマン様の出番です!」
「よしきたッ! 俺に任せとけ!」
一応米子の言葉にのってみるも、「やっぱ無理無理無理、ムリ―!」と叫ぶ。なんて情けないヒーローなのだろうか。
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