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「企業秘密って……お前、一体なにもんなんだ? 変な仮面被りやがって。ムカつくんだよ。腹正しいったらありゃしねー」
餅のように伸び縮みする、純白の餅のようなもので拘束された男は僕を訝し気に睨む。
米粒型のプラスチック製の仮面の額に、『米』と赤文字でかかれた鉢巻きをしているようなデザイン。
両耳に引っかけて被るタイプのものらしい。耳が痛くならないための配慮なのか、引っかける箇所がガーゼで出来ているところに、作り手の優しさが感じられた。
なんとも言えないデザインをした米粒型の仮面に、すっぽり顔を隠す僕は、声を荒げる男にビクリと身体を震わせる。
表情はよく分からないだろうが、目の前の男を恐れすぎて、半泣きモードに入れそうだ。
「僕は……こ」
僕は恐怖と戸惑いで言葉をつまらせる。
「こ?」
ますます苛立ちを露わにする男は、僕の言葉を急かすようにオウム返しをする。
「こ、米粒ヒーローマンだッ‼」
恐怖に背を押されるかのように、僕は大きな声で断言してしまう。
嗚呼、悲しきかな。
ネーミングセンスを疑ってしまうほど、ダサいヒーロー名を携えたヒーローが今ここに、誕生してしまった――。
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