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あの時の私は馬鹿だったなあと思う。
ちょっと優しくされて。
頭を撫でられて。
ただそれだけで、この人達の子供になったらきっと幸せになれるんだ!なんて思ったんだから。
殴られないんだ。
ご飯も食べさせてもらえるんだ。
床で寝なくていいんだ。
汚い服を着続けたりお風呂に入れてもらえなかったりしないんだ。
待っていたのは、先の見えない孤独だった。
養子として引き取られた翌年、その夫婦に待望の男の子が生まれた。
8歳の冬だった。
どうしても跡継ぎが欲しかったその家では、それはそれは大事に育てていた。その、男の子を。
私を、離れに閉じ込めて。
人間なんてみんなそんなもんだ。
愛情なんてもんは、愛される人間にだけ与えられて、価値のないとみなされた人間には、一生無縁のものなんだ。
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