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その日以来、櫂はしょっちゅう薬指に嵌めたリングを眺めてニヤニヤしていた。
大学でもバイト先でも眺めているので、嫌でもみんな「彼女とペア?」と聞いてきた。
「うん、まあ」
櫂は、曖昧に言って誤魔化す。
誰彼構わずカミングアウトする必要は無いし、秘密感があったほうが萌える。
バイト先で休憩している時のことだった。
スマートフォンに駿から連絡が入っている。
『バイト中、ごめん』
『いいよ、何?』
『指輪が無い』
「ええっ?!」
櫂は、ガタンと座っていた椅子から立ち上がった。
全く駿の奴!ホントにだらしない!
初めて駿に怒りを覚えた。
俺がどんな想いで買ったと思ってんだ!
櫂が立ち上がってムッとしているので、休憩に入ってきた中川がギョッとしている。
「どしたの?如月くん」
「あ、いえ、何でも」
どうやっても怒りが治まりそうに無かった。
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