駿の気持ち

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「おはよー」 櫂が、ノロノロとリビングに起きて行くと駿が食器を洗いながら、爽やかな笑顔で言った。 ほとんど眠れなかった櫂は「あー、おはよ…」と無理やりに口角を上げる。 「どしたの?体調悪い?」 そう言いながら駿が櫂の額に手を当てた。 その手をグッと掴む。 「ん?何?」 駿は、驚いて櫂を見た。 「駿は…駿はさ…」 「うん?」 俺と寝なくても平気なの?と聞きたかった。 俺は、寂しくておかしくなりそうだった…と。 けれど、怜に言われた言葉を思い出してグッと堪える。 駿は、受ける側だから負担も大きい。 もしかしたら、そんなに気持ちよく無いのかもしれない。 色々考え出すと止まらなくなった。 「どうしたんだよー」 駿は、どこまでも無邪気に言うとギュッと抱きついてきた。 「たまに離れて寝るのもいいね。こうやって朝、会うの新鮮」 「え?あ、うん、そう、だね」 ギュッと、心まで鷲掴みにされる。 全くこの天然小悪魔め… 櫂は、駿をギュッと抱きしめ返し、そうっとお尻を撫でる。 「あ、もう。朝からダメだよ」 パッと振り払われて、ガッカリする。 「今日、昼からだろ?俺、一限からだから先に食べたよー」 駿は、そう言いながら洗面所に歯を磨きに行ってしまった。 喜ばせたり寂しがらせたり、駿は本当に櫂の心を掴んで離してくれない。 どれだけ惚れさせんだよ、と櫂は苦笑した。
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