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「ところで、どうして私たちだったの?」
「誰が選ばれるかは分かりませんでした。でも僕たちには共通点がありました。やり残したことがある。一番になっていない。このままでは卒業できない。という悔しさです」
「確かに。私も、凌くんも、葛城も二位だったわね。私は負けたまま中学を卒業できないと思っていたわ。でもゲームの後、私の中にあったもやもやが吹っ切れて、ゲームのおかげで前を向くことができたのよ」
「俺もそうだ」と葛城は答え、高柳は頷いていた。
「それなら良かったです。ゲームを作った甲斐がありました」
「でも安心した。またあの世界に行ってしまわないか十七年間ずっと不安だったの」
「もう大丈夫です。あのゲームは、あの後すぐに削除しましたから」
室井と高柳は安堵の溜め息を吐いた。
「なあ、急に静かになったぜ」と言って葛城が後ろを見回している。
賑わっていた店内は、四人以外の客が一人もいくなっていた。店長もアルバイトもいない。窓の外にも人の気配がない。
「神島、お前……」
「僕は何もしていません」
店内に静寂が漂った──。
悔いのない旅立ち
おわり
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