失踪

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失踪

 時折吹く突風が、校庭の桜並木に降り積もる桜の花弁をハラハラと()いていく。 「一同起立!」  三年間過ごした中学校生活が、この日で終わる。体育館に整列したパイプ椅子に座る生徒たちは、一斉に立ち上がった。亜久里(あぐり)大学付属(たき)中学校は、全校生徒数一八六〇人を誇るマンモス学校である。この年の卒業生は六〇八人。体育館も国内では一、二を争う広さだ。 「礼! ──着席」  過去を振り替える者、次のステージに心馳せる者、思い思いの感情を胸に、着席した。 「卒業証書授与。──安堂勉」 「はい!」  哀愁漂うBGMが別れの淋しさを(いざな)う。体育館の壇上で校長先生と向かい合う生徒、壇上へ上がる階段の前で待つ生徒。名前を呼ばれ、その階段前へ移動する生徒。授与式はテンポ良く進んでいた。
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