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正門まで戻ってきた。誰もいない学校は静まり返っている。昆虫もいない。チャンスである。この隙に体育館の中へ駆け込むと、葛城は扉の脇に室井を寝かせ、三人は急いで奥の扉から鍵を閉めていった。
残る最後は、横たわる室井の横の扉だ。葛城が扉に手を掛けようとしたその瞬間、強い衝撃が屈強な葛城を吹き飛ばした。緑色をしたバットのような尖ったもので弾かれたのだ。
カサカサという音と共に、それがもう一本現れた。蟷螂の鎌のようなそれは、これまで見た昆虫の何十倍もある大きさだ。尖った切っ先が室井の腹に突き立てられる。巨大昆虫は彼女を引き摺り寄せた。
その残虐な光景を目の当たりにした葛城は、雄叫びを上げ昆虫に向かって突進した。室井の腹に突き立つ昆虫の鎌を目掛けて、鍛え抜かれた右足で渾身の回し蹴りを繰り出す。
木製の角材がへし折られたような音が、葛城の脚から鳴り響いた。
「うぎゃああぁぁ!」
右足を抱え、床をのたうち回った。そんな葛城を気にも留めず、昆虫は室井を口へ運び頭から上半身を押し込んだ。
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