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鬼気迫る鬼の形相で、葛城は痛みを堪え昆虫に体当たりをする。そのまま扉の外へと押し出した。
「高柳、扉を閉めろ! 鍵を掛けろおおぉ──!」
葛城の気迫に背中を押され、高柳はほとんど無意識に扉にしがみつき、重たい扉を横に滑らせた。扉の向こう側からビチビチと柔らかいものが千切れ、メキメキと硬いものが砕ける生暖かい音が聞こえてくる。サムターンのレバーを摘まむが力が入らない。手首を右に捻るだけなのに、言うことを聞かない。
「高柳さん!!」神島の叫びにも近い呼び掛けで、高柳は平常心を取り戻す。
ガチャリ!
高柳は扉を背にその場でへたり込んだ。天井を仰いで瞼を閉じると、忘れてしまった息の仕方を今思い出したかのように、深く空気を吸い込んだ。
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