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エントランスへ入ると、若い喋り声が聞こえてきた。
「俺は猫を追いかけていたら、ここに辿り着いたぜ。お前は?」
室井は、声のする部屋を覗き込む。背が高く、学ランを着ていても分かるほど筋肉質な体躯にツンツン頭、そして勢いのある顔をした男子がいた。
「俺は光に導かれた」
そう言った彼は更に背が高く、特別痩せてはいないが華奢に見えた。切れ長の目にテクノカットを取り入れた髪型が少しキザに見えた。
「しっかしどうなってんだよ、突然みんな消えちまったぜ」
「分からない。俺は卒業式の真っ最中だった。突然、全員消えたんだ」
「そう! 俺もそう! 卒業証書を受け取る直前にパッとみんな消えちまったぜ」
「私もそうよ」
喋っていた二人は飛び上がった。二人とも尻餅を突いて室井を見た。
「あ、ごめん。脅かしちゃったみたいね。でも良かった、私以外にも人がいて」
室井はその場でへたり込んでしまう。
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