カエルの王女様

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 片桐萌華(かたぎりもか)は、これから入学する大学の校門前に 立っていた。 式の開始時間二時間前のため、まだ人はあまりいなかった。  萌華は周りに人がいないことを確認すると   ”今日からお世話になります” と心の中でつぶやき校舎に向って深々と一礼をした。 自分では長い間頭を下げていたように感じたが、ほんの2、3秒だった のだろう。  萌華は身長145センチ。 小柄で丸顔に丸い大きな瞳、丸い眼鏡をかけている。 髪はおかっぱで、前髪は眉の高さに切りそろえられている。 体重は秘密だけど、ぽっちゃりしていて全体的に丸い印象。 童顔のため大学生というより小・中学生くらいに見られることもあり 大人っぽい人に憧れていた。  さきほど、大きなリュックをランドセルと見違えられ 小学生に見られたところだった。  初めて袖を通した紺色のスーツも似合っているのかも 萌香には分からなかったが、真新しい服の匂いと周りの空気を 鼻の奥まで深く吸い吐き出すと、萌華は大きく一歩を踏み出した。  新しく始まる大学生活に困難が訪れても踏み越えていけるように 願いを込めて。 入学式が始まり、滞りなく進んでいった。  萌華はパイプ椅子の背もたれにもたれることなく背筋をぴんと伸ばし 座っている。 子供の頃からの癖かもしれないが、変な座り方をしていると おじいちゃんによく怒られたような気がする… その頃のことを思い出そうとすると思い出すことができず、 頭の中にもやがかかったように感じた。 ”あれ?どうだったかな。また思い出すかな” 萌華はどうでもいいやと思い、深く追求しなかった。 すると「なかなか終わらないね。退屈じゃない?」 と右隣の席の女の子に声をかけられた。 「そうですね」 式の途中のため、マジメな萌華は小声で答えた。  頭は正面に向けたまま、目だけを声の主に合わせると そこには黒髪ショートで吊り上がり気味の目をしたボーイッシュな 女の子がいた。 大学一年生を女の子呼ばわりしていいのか分からないが、自分よりは 大人っぽいと萌華は思った。 「私、稲生りか(いのうりか)」 と言い、ウインクされた。 「私は片桐萌華と申します」 萌華が丁寧にあいさつをすると、りかは白い歯をのぞかせてにこにこと 笑っていた。 「明日からよろしくね」 りかはそう言うと前に向き直った。
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