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聡先輩と会う約束の日。
「ギィヤァァ!!!」
片桐萌華は、鏡に映った自分の顔を見て叫んだ。
朝、起きて洗面所の前を通った時、ふと鏡に映った緑色が気になり
足を止めた。
鏡を見ると、自分の顔の左半分が黄緑色になっている。
「何これ!?」
他の部位も確認しようと目線を下げると、左の手の甲も黄緑色に
なっており、手をひねると手のひらの指先には吸盤らしきものも見える。
あまりの出来事にこれは夢かもしれない、いや夢よと思い、
右頬をつねってみるが痛い。
「これは現実なの…」
へなへなとその場に座り込んでしまったが、
そこにアマガエルがいた。
萌華はギョッとし、アマガエルを凝視しながらゆっくりと後ろへ
下がった。
アマガエルはじっとしているが、いつこちらに跳ねて来るか
分からない。
萌華はアマガエルを注意深く見ていると、アマガエルは二足で立ち上がり
「王女様、お迎えに上がりました」
とアマガエルが言葉を発したのだった。
「!?」
立ち上がった上にしゃべるという現実では受け入れられない衝撃に
萌香は固まっていると、カエルがまたしゃべった。
「私は王様に仕えているナミと申します。
王女様、人間としての生活時間はそろそろ終わりますので、
お帰りの用意をしてください」
「…わ、私がカエル?人間ではないってこと?」
萌華が尋ねるとアマガエルが返事をした。
「そうでございます。人間になる時のご記憶はございませんか?」
アマガエルに尋ねられたが、萌華は黙って頭を左右に振った。
「そうでございますか。しかし、あなた様はカエル国の王女様
なのは間違いございません。
王様からも無事にお連れするように申し付かっております。
お連れできないようなら、私の首ははねられますので、
必ずお帰りいただきます」
すがるような目で私を見上げてアマガエルは言った。
「急にそんなことを言われても、大学だってまだ途中だし…」
そこまで言うと萌華は、大好きな聡先輩に会えなくなることを想像した。
そう思うだけでも胸が締め付けられ涙ぐんでしまった。
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